2006年12月のご挨拶

こんにちは。12月に入り、ウィーンもすっかりクリスマスムードに包まれています。カールス教会の 前の広場もすっかりライトアップされ、クリスマス市で屋台が出たり、移動遊園地があったりと、夜遅くまで賑わっています。今年の9月~11月は、18世紀 に気象観測を始めて以来の「暖かい秋」だったそうで、12月の今でも気温は最低でも2・3度、昼間は10度近くまであがっています。例年なら寒いときはマ イナス20度にもなるそうなので、今のところはとても助かっています。

先日は大学時代の友人に会いにパリに2泊3日で行ってきました。パリ に行くのは数年ぶり2度目でしたが、痛感したのは、ウィーンに比べてパリが大都会であるということ、そして都会であるにもかかわらず多くの地下鉄の駅にま だエレベーターもエスカレーターもないなど、バリアフリーがまだまだ進んでいないということです。レストランやカフェの入り口にもやはり大きな段差がある など、まだまだ車椅子には厳しい街だと感じました。

ルーブル美術館の中の段差解消機は新しくなっていて、以前はいちいち係員を探さなくては 乗れなかったものが、自分で乗れるようになっていました。ただ全ての階段にこの機械が付いているわけではないので、時には遠回りしなくてはならないのは問 題です。(ルーブル、オルセー美術館の入場料は障害者は無料なのであまり文句は言えませんが。)モナリザが入り口からぐっと近くになっていたのには驚きま した。(たどり着くまでに楽になったのは嬉しいのですが、少しありがたみが薄れてしまったような気がするのは私だけでしょうか)
ウィーンは パリに比べると小さな都市ですが、バリアフリーは思いのほか進んでいます。地下鉄は4路線ほとんど全ての駅にエレベーターがついています。中心部を走るバ スは全て低床バスですし、路面電車も半分くらい低床車輌が走っています。交通手段に関しては日本に負けないくらいバリアフリーが進んでいるのではないで しょうか。

ただ、ウィーンの建物は歴史的に古い物が多いので、どうしても入り口から段差があるものが多いようです。建物の中にもエレベー ターの前に数段階段があったり、ひとりで行動するにはやはり厳しい面もあります。オペラ座やコンサートホールの車椅子席がとても少ないことも非常に厳しい です。(毎回争奪戦です)

車椅子ユーザーにとってウィーンにはもう一つ大きな問題があります。ウィーンには愛犬家の方が多いらしく、あちこ ちで大小さまざまな犬を見かけます。みんなきっちりとしつけをされているので、車椅子を見ても(驚きたじろぐ子もいますが)吠えかかったりしてくる犬は まったくいません。大きな犬はハンニバルのように口に金属製のマスクをしている犬もいます(見てて少しかわいそうですが)問題なのは犬ではなく飼い主のほ うというべきでしょうか、道端によく落ちているんです、うん○が。たばこの吸殻もよく落ちていて、路上はとても美しいとは言い難いのですが、犬のう○こは 車椅子ユーザーには大敵です。踏んでしまおうものなら、タイヤを通じて手にまで付いてしまうのです。時には犬!?と思うような巨大なものまで。。暗い夜道 には本当に気を遣います。どうぞ愛犬家の皆さん、宜しくお願いします。

一年の最後のご挨拶が少し汚い話になってしまいました。初めて過ごすヨーロッパでのクリスマス、年末年始が楽しみです。皆様、よいお年をお迎えください。

2006年11月のご挨拶

こんにちは。あわただしくウィーンでの日々が過ぎていきます。先日はウィーンで初雪が降りました。こちらは例年にないほどの暖かさということですが、それでも日によっては最低気温がマイナスになります。これから一体どんな冬を体験するのか今から不安です。

ウィー ンはいわゆる「大陸性気候」で快晴の日が多く降水量が少ないのが特徴です。(海洋性気候の日本とは正反対です)雨が少ないのは車椅子にとって、非常にあり がたいことです。でも、一日の天気は非常に変わりやすい。気持ちよく晴れていたかと思うと、あっという間に雲が出てきて、みるみるうちに暗くなったかと思 うと、吹雪になったり、そうかとおもうと、雪が降ってるのに晴れ間が覗いて、しばらくすると青空が広がる。まるでソナタ形式のよう。表情豊かな音楽はこの 天候がもたらしたのかもしれない。(天気予報は大変。見るホームページごとに予想が違うんです)

日本でも11月はコンサートラッシュですが (ウィーンフィルは今は日本ですね)こちらも負けないくらい素晴らしいコンサートの目白押しです。ギーレン氏指揮のシェーンベルク「グレの歌」、アムステ ルダムコンセルトヘボウ/ハイティング氏指揮のマーラー交響曲第4番、リヒャルト・シュトラウスの歌曲。まさに『陶酔』という言葉しか思い浮かばないほど 繊細で今にも壊れそうな甘く美しい音楽。CDでは知りえなかった後期ロマン派のウィーンの音楽の魅力を身をもって体験しています。

コンサー トやリハーサルでマエストロに会えることも私にとっては魅力です。もちろん日本でもお会いすることはできますが、なかなか厳しい。出待ちであったり、特攻 隊気分で舞台裏に行ったり、覚悟が必要です。ムジークフェラインではそんなことはない。(こわもての警備員の方はいるが実はとても優しい)先日は初めてベ ルナルド・ハイティング氏に会うことができました。実に繊細で一部の隙もない音楽を作り上げた彼は一体どんな人物なのか接してみたかったのですが、会って さらに感動しました。思ったより小柄な方で強いオーラを放っていらっしゃるわけでは決してないのですが、静かで本当に温かく、すべてを包み込んでしまうよ うな大きさを持った方のように感じました。自分が指揮の勉強をしている旨を伝えると、「ぜひずっと続けてください」とおっしゃって下さいました。

先月お会いしたアーノンクール氏、今月お会いしたテイト氏、そしてウィーンフィルのメンバーの方々。今まさに活躍されている音楽家の皆さんに会って、そして その人間性に少しでも触れ、そして言葉を交わすことは、自らの目標、生きる世界を身体で確認できるかけがいのないチャンスだと思います。実際にその人に会 うとCDや雑誌で想像していたものとは違う一面を必ず見せて下さいます。私の想像などはるかに超えて深み、多様さを感じさせてくださるのです。(こわもて のアーノンクールがあんなに優しく、謙虚な方だとは!)自分自身「人間」を磨くことも非常にに大切だと痛感しています。

さて、今日はベルリンフィルのコンサートだ!

2006年10月のご挨拶

ウィーンに来て早速、更新が滞ってしまいました。申し訳ありません。
10月2日から ウィーン国立音大の授業と通っているドイツ語学校の授業が始まり、午前中は大学(平日月~木)、午後は語学学校(月~金)の毎日が始まりました。ウィーン 国立音大は、指揮講習会で教えてくださったピロンコフ助教授の特別のご好意により聴講生としてライオビッツ教授の授業を見学しています。世界各地から集 まった(といってもアジア人が多いのですが)指揮者を志す学生と共に勉強できる環境は、音大を卒業していない私にとって、とても刺激的です。ただ、当然の ことながら講義は終始ドイツ語。大学で1年以上勉強していたにもかかわらず、10年前のことですっかり忘れてしまった私にとって、曲目解説の講義は必死に 耳を傾けてもチンプンカンプン。笑いが起こってもなんのことやら。ドイツ語の勉強と予習は必要不可欠です。

ドイツ語の勉強はIKIという学 校に通っています。オペラ座の斜め前にあり、大学とアパートのちょうど中間に位置するので通うにも便利です。これまた世界中から集まった学生たちとドイツ 語の勉強する環境も実に新鮮です。それぞれに持つ文化、感覚の違いも明らかで、どこの国とは申しませんが、授業の流れも気にせず質問に明け暮れたり、人の ものは自分のもの感覚の人がいたり、なかなかに大変です。若い人が多いせいか(下は16歳!)集中力が異様に持続しない人が多い気がします。それでも、根 気よく、丁寧に何度も反復し、宿題もたくさん出るので、着実にドイツ語は身についている感覚があります。

もう一つの大きな目的は、「ウィー ンの音楽を聴くこと」です。和声感、音楽の緊張と弛緩の関係。湯浅さんや下野さんがおっしゃる最も重要な要素を、できる限り自分の身体に覚えさせたいと考 えています。多くの方のご厚意により、私の強引なお願いを聞いてくださり、ウィーンでウィーンフィルのリハーサルを聞く機会を得ることができました。アー ノンクール氏指揮のウィーンフィルのリハーサルを!です。しかも1stヴァイオリンの一番後ろのプルトノすぐ後ろで聞いてしまいました。ウィーンフィルは 思いのほか和気藹々としたリハーサルですが、実に細やかに音楽を作るアーノンクール氏、繊細な音で答えるウィーンフィル。とてつもない音とアンサンブルを 間近で聴く体験は、筆舌に尽くしがたいものがあります。ムジークフェラインの大ホールの響きもいまさらながら驚かされます。まさにホールそのものが楽器と も言える感覚で、ウィーンフィルはこのホールの響かせ方を熟知しているように感じました。ブルックナーの5番は本当に素晴らしかった。(ただ響きは聴く場 所によって幾分違うように私は感じました。)

ただ、最大の難点は車椅子席が少ないこと。舞台が見える車椅子席は1階にたった一つ。あとの車 椅子席は舞台がほとんど見えないバルコンの2列目。立てる人ならバルコン2列目でも舞台は見えますが、なぜわざわざ立てない人を見えない席に?最も安い立 見席のチケットは車椅子は「安全上の問題」により売ってもらえない。(正確に言うと売ってはもらえるが入れてもらえないので要注意)音楽を愛する人が世界 中から集まるこのホールで、たった1席とはあまりに少ない。ウィーン市民も自分が車椅子になったら、1席しかなくなってしまうことに早く気づいて欲しい。 ちなみにウィーン国立歌劇場も4席と非常に少ない。コンツェルトハウスも4席。日本でもそうだが、高齢化社会を向かえた今、車椅子席はまさに争奪戦。車椅 子席の増設を是非検討して欲しいです。

障害者スポーツ交流デー ミニコンサート

日時2006年9月10日(日)
場所世田谷区立総合運動場 体育館
演奏ざま弦楽アンサンブル
指揮宮野谷 義傑
演奏曲目
  1. となりのトトロ(体験指揮コーナー)
  2. 川の流れのように
  3. 八木節
  4. アイネクライネナハトムジーク
  5. G線上のアリア 他
チケット入場無料

今回は2週間という短い中で本当にたくさんの仕事の機会を頂き、本当に嬉しく思います。この日はそのまま関西空港に向けて出発するという慌しい一日でした が、久しぶりに「ざま弦楽アンサンブル」のみなさんとご一緒させていただき、本当に楽しい時間を過ごすことができました。

ここでも「指揮者 体験コーナー」を設けましたが、こちらも大好評をいただきました。一生懸命身体を使って音楽を表現しようとすることは、精神的にも身体の上でも非常によい ことだと思います。参加してくださった方の笑顔が今でも思い出されます。ご協力くださったざま弦楽アンサンブルの皆さん、エキストラの皆さん、そして世田 谷区立総合運動場体育館のスタッフの皆さん、本当にありがとうございました。

文京区立第九中学校 講演会

日時2006年9月8日(金)
場所文京区立第九中学校 体育館
演奏弦楽五重奏
指揮宮野谷 義傑
演奏曲目アイネクライネナハトムジーク 1・2楽章

2週間弱の日本滞在でしたが、私の文林中学校時代に数学を教えてくださった新井先生のご紹介で、今新井先生が副校長をお勤めになっている文林中学校のお隣、第九中学校で講演と演奏をさせていただく機会をいただきました。

1 時間弱という短い時間でしたが、「自分の意思を伝えること、人の意思を受け取ること」ということに焦点を当てて、指揮の話を交えながらお話をしました。自 分の存在が唯一無二のかけがいのない存在であること、自分が感じること、考えることに自信を持って欲しい、同時に周りの人の存在も大切にして欲しい、とい う内容をできる限り多くの方にお伝えしたかったのですが、自分の拙さもあり、十分にお伝えし切れなかった部分もありましたが、後日頂いた生徒さんの作文に は、十分、私の意図を受け止めてくださった方が多くいらして、とても嬉しく思いました。できる限り多くの若い方に、自信と勇気と優しさを伝えていける存在 になりたいと強く思いました。

ミプロキッズフェア2006 in 神戸

日時2006年9月2日(土)、3日(日)
場所神戸国際展示場3号館
演奏弦楽5重奏
指揮宮野谷 義傑
演奏曲目
  1. となりのトトロ
  2. プリンク・プランク・プルンク
  3. アイネ・クライネ・ナハトムジーク 他
チケット入場無料

7月1日に東京池袋サンシャインで、障害をお持ちのお子さんとご両親にお話と演奏をさせていただいた企画をそのまま神戸で!というありがたいご依頼をお受けして、ウィーンから一時帰国して神戸で神戸のお子さんとご両親の方々にお話と演奏をさせていただきました。

「マイタクト」をもって、指揮者体験コーナーに臨んで下さった方、クラシックが大好きでずっとウィーンに憧れているお子さん、普段行きたくてもなかなかコン サートに行くことのできない方など、二日間でたくさんの方との出会いがあり、すばらしい時間を過ごすことができました。当日演奏をお手伝いくださった方、 スタッフの方に心より御礼申し上げます。

2006年9月のご挨拶

こんにちは。今月初めの二週間弱、神戸、東京で仕事を頂いていたため、日本に帰ってきていました が、15日からウィーンに戻ってきています。先日ウィーンの住まいもやっと決まり、ひとまずほっとしています。ウィーンは早くも秋の風が吹いていて、最高 気温が22度くらい、最低気温は11度くらいまで下がります。ユーロが高くて(昔は1ユーロ100円位だったのが去年は135円、今は150円!)何を買 うにも、日本円に換算すると驚きの値段になってしまい、非常に苦しいです。日本円がんばれ!!

今月の神戸、東京の滞在は短いものでしたが、 とても充実した時間を過ごすことができました。神戸と世田谷では障害を持った方とご家族の方を対象にお話をコンサートをする機会がありました。まるで自分 の子供時代を見ているようなとても懐かしい気持ちで、自分の事故のことや小中学校の体験談をしました。いつものように演奏・指揮体験コーナーも設けたので すが、私と同じように、音楽からエネルギーを得て生きてきた方や、自分の指揮棒まで用意してきてくれた子まで参加してくれました。大勢のお客さんの前で (といっても30人くらいですが。)、しかも初めて指揮棒を持つという大変な緊張の中で、それでも精一杯、演奏者に向かって、何かをやってみようとする姿 勢は心打たれるものがありました。聴いて下さった皆さんと一体感のある楽しい時間を過ごすことができました。ご協力下さった、神戸の演奏家の皆さん、ざま 弦楽アンサンブルの皆さん、真摯に取り組んでくださり本当にありがとうございました。

文京区では、母校の文林中学校の隣、文京九中の皆さん を前に1時間ほどお話とコンサートをする機会をいただきました。まさにこれから自分の進路を見定めていく時期、少しでもヒントになればと思って、お話しま した。近年、将来に希望が持てなかったり、自分自身を見放してしまう若者が多い中で、自分自身が唯一無二の価値のある存在であることをぜひ知ってもらいた いと思いました。しかし自分の力量不足で、演奏も含めて1時間強という短い時間で、できる限り多くのことを伝えたいという気持ちばかり先行してしまって、 話をうまくまとめきれなかったことを反省しています。でもみんな、暑い中、静かに、真剣に、時には目を輝かせて聴いて下さって本当に嬉しかったです。

先日、九中の皆さんから作文が届きました。私のメッセージをお一人お一人がちゃんと受け止めて下さったことを知り、感激しました。中学生の皆さんの感性の豊かさ、確かさを改めて知ることができました。作文は私の宝物の一つになりました。

日 本に滞在した時間は、とてもハードでしたが、指揮者として自分がどの方向に進むべきか確認させてもらった時間であったように思います。小泉首相(皆さんが お読みになるころは元首相ですね。)が退任に際しメールマガジンで「いつも何かに守られている、運がいいな、と思いながら、何とか頑張ってきました。」と 書いておられました。この言葉を読んだとき、「あ、一緒だ」と思いました。私もいつも、多くの人に見守られ、支えられてここまでやってこれた、自分は本当 に運がいいと常々思っています。ここウィーンでも多くの温かい人に出会い、支えられています。その私の使命は、音楽や言葉を通じて、今苦しんでいる人、そ してこれから人生を切り開こうとしている若い人たちに、少しでも勇気や支えになれる存在になることなのだと信じています。

自分はまだまだ未熟で甘い人間です。異国の地ウィーンで少しでも自分を鍛えていかねばと思います。「メッセンジャー」としてふさわしい指揮者、そして人間に少しでも近づいていけるよう、ウィーンで頑張っていこうと思います。
ウィーンにいらっしゃる際は、ぜひお声をかけてください。

MFL管弦楽団 2006年サマーコンサート

日時2006年8月5日(土)
場所西国分寺 いずみホール
演奏MFL管弦楽団
独奏魚住 歩(クラリネット)MFL管弦楽団団員
池本 登(ホルン) MFL管弦楽団団員
指揮宮野谷 義傑
演奏曲
  1. ホルン協奏曲第1番 ニ長調 K.412+514
  2. クラリネット協奏曲 イ長調 K.622
  3. 交響曲第40番ト短調 K.550
  4. アヴェ・ベルム・コルプス(管楽器編曲)

1年に2回のコンサートという試みで企画された夏のコンサートですが、練習期間が半年と短い上に、私が留学の準備で忙しく、たくさんの方のご協力を得てコンサートを開催することができました。ありがとうございます。

今回のコンサートでは団員がソリストを務めるという特別なコンサートでした。池本さん、魚住さん、お二人とも楽器に、音楽に並々ならぬ情熱をお持ちの方で、 モーツァルトのコンチェルトという難曲を一生懸命、かつ誠実に演奏していらっしゃったことが、何よりも心に残るコンサートでした。

2006年8月のご挨拶

8月は海外留学、その準備に明け暮れてしまったために、ホームページの更新まで手が回りませんでした。定期的にご覧下さってる皆様、ご心配をおかけして申し訳ありません。(もうたびたびの事で心配なさらなくなってしまったことと思いますが・・)

8 月は、二つの指揮講習会を受講しました。ひとつは、ウィーンへ渡るまさに直前、前日と前々日の二日にわたって福島県いわき市で行われた、小林研一郎先生の 講習会です。ヨーロッパに渡る前に、どうしても10年前、最初に指揮を教えて下さり、大きな勇気を下さったコバケン先生のレッスンを受けたいと考え、無茶 なスケジュールをおして参加することにしました。ウィーンへ行く前に、先生の音楽にかける精神の深さを肌で感じることができて、本当によかったと思いま す。先生が私の「裂帛の気合」を褒めてくださったことは、なによりの勇気と自信につながりました。

そして、翌日から台北、アブダビを経由し て憧れのウィーンに入り、ウィーン国立音大のピロンコフ先生の講習会に参加しました。はるか昔、大学卒業前に友人と初めて来た、ウィーン。その時はただた だ、憧れの地へ来たことが嬉しかった。二度目は家族旅行で来た。その時は、いつかここで勉強してみたいと思った。 3度目のウィーン。ついに音楽を勉強するためにここへ来たことが、感激でした。クラシック音楽が伝統として根付き、空気のように当たり前に存在するこの地 で勉強できるのはこの上もない贅沢だと改めて思います。

講習会の後半はチェコの都市、オロモウツに移動し、実際にオーケストラを前にレッス ンを受けました。オロモウツは温かい人が多く、パンクしてしまった車椅子のタイヤを、自転車で通行していた見ず知らずの人が、路上で1時間くらいかけて親 身に修理してくださいました。一生忘れえぬ思い出になりました。

ヨーロッパのオーケストラを振ることは生まれて初めての体験でしたが、やは り日本のオーケストラとはどこか響き、雰囲気が違うと感じました。ヨーロッパの音の立ち上がりは柔らかい、そしていい意味でも、悪い意味でもある種の「遊 び」といった余裕、アバウトさがあるという風に感じました。大切なのはその遊びの部分を潰すのではなく、一緒に楽しみながらいい方向に持っていくことだと 感じました。チェコ語は「ドブリーデン!(こんにちは)」しか分からない中、不自由な英語と、身振り、そして表情でコミュニケーションをとる楽しさを体感 することができました。本番はJ.シュトラウスの「こうもり」序曲を振ったのですが、心底幸せで、いい経験になりました。先生、楽団のメンバーの方、そし て生徒の皆さんに、大変お世話になりました。もっと、ヨーロッパのオーケストラと演奏を重ねていきたいと強く思うようになりました。ありがとうございまし た。

音楽のパレット1st.コンサート「今年はとことん!モーツァルト」

日時2006年7月15日(土)
場所広島市東区民文化センターホール
ソプラノ独唱塩井 京子
ピアノソロ土居 里江
演奏音楽のパレット アンサンブル
演奏曲
  1. モテト「踊れ、喜べ、汝幸いなる魂よ」K.165
  2. ピアノ協奏曲第12番イ長調 K.414
  3. 交響曲第40番ト短調 K.550
  4. オペラ「魔笛」より「夜の女王のアリア」(アンコール)
  5. モテト「アヴェ・ヴェルム・コルプス」(管楽アンサンブル版)(アンコール)

念願でもあった東京近郊以外での初の本格コンサートです!広島に在住されている鈴光さんが、モーツァルトモデルンのチケットの懸賞に応募され、当選し、広島 から聴きに来て下さったという偶然、まさに「縁」からスタートした今回のコンサートは実現までに紆余曲折。いろいろな人の想いが交錯したり、すれ違った り。広島と東京の距離が時に大きな障害になりましたが、たくさんの方の献身的なサポート、そして演奏者のみなさんの音楽に対する真摯な姿勢のお蔭で、この ハンデを乗り越え大きな成果をもたらすコンサートを実現する結果につなげることができました。

モーツァルトの生涯をたどりながら、10代、 20代、30代の作品を、声楽曲、協奏曲、交響曲と織り交ぜながら聴いていただく今回の企画は、生誕250 年を機に、「人間」モーツァルトをより身近に感じていただく良いきっかけになったのではないかと思います。今後もこの「音楽のパレット」の企画は継続して いきます。広島の地元の方に愛され、地元の方たちと共に作り上げていくコンサートを目指していきたいと思います。

2006たちかわみんなの音楽祭

日時2006年7月2日(日) 14時開演
会場立川市市民会館(アミューたちかわ) 大ホール
演奏立川管弦楽団
独唱
  1. ソプラノ:立野至美
  2. アルト:菅家奈津子
  3. テノール:村上俊昭
  4. バス:豊島雄一
合唱たちかわみんなの音楽祭合唱団
指揮古谷 誠一
演奏曲目
  1. ヴェルディ 序曲「シチリア島の夕べの祈り」
  2. ヴェルディ レクイエム

古谷先生がイタリア留学から帰ってこられて初めての定期演奏会。そして私が留学にいくまでの最後の定期演奏会です。9年弱立川管弦楽団に在籍し、「英雄」、 「運命」、第9、「悲愴」といった名曲の数々から、ブルックナーの5番、バーバーのヴァイオリン協奏曲といったマニアックなものまで幅広く勉強させていた だきました。オケの中で演奏するのは本当に指揮の勉強に役立ちます。

私が申し上げるのは甚だ生意気なことで申し訳ないのですが、古谷先生は 本当にきっちりと勉強され、ニュアンスもしっかり表現され、指摘も明るい声で、決して怒ることはなく、明確かつ的確、オペラでも、今回のような声楽曲でも 歌詞まできっちり勉強されています。東大ご出身でいらっしゃるから、「きっちり勉強する」という指揮者にとってもっとも厳しい部分をしっかりとお持ちなの だなと思います。いつも脱帽で感動すらたびたびしてしまいます。直接棒のご指導を頂いたことはないのですが、私の影の師匠です。少しでも古谷先生に近づけ るように頑張りたいと思います。(古谷先生、生意気を言ってごめんなさい)

2006年7月のご挨拶

こんにちは。7月になって2006年も折り返しが近づいてきました。4年に一度のワールドカップも 日本にとっては残念な結果に終わってしまいました。その国を代表して戦うということは、私たちの想像をはるかに超えるようなプレッシャーとの戦いなのだろ うなと思いました。お互いが大きな物を背負って臨む試合は、やはりそれまで積み上げてきた自信と、覚悟のぶつかり合いなのだと感じました。一方で、ジダン 選手に象徴されるようにレッドカードが過去最多ということは非常に残念です。怒ったほうも、怒らせたほうも、いろいろな人の夢や思いが注がれていることを 忘れてしまうのでしょうか?中田選手の早すぎる引退も個人的には残念です。

今月は1日にサンシャインで車椅子のお子さんとご両親に、8日に は神奈川県内の幼稚園で、お話と演奏をさせていただく機会がありました。次の世代の子供達と直接接してみて、子供たちの屈託の笑顔に心が洗われる思いがし ました。同時に「大人になる」ということは、「次世代の子供たちに対して伝えるメッセージを持つ」事なのだと私は思いました。もちろん、私自身、発展途上 の人間で、まだまだ子供たちの夢や期待を背負えるような存在ではありません。ですが、、自分の存在や言葉が少しでも、子供たち、特に同じように体に障害を 持った子供達に希望を持ってもらえる可能性があることを信じ、自覚を持っていたいと思います。別に立派である必要はないと思います。かっこつける必要もな いと思います。ただ、あきらめずに、自分を捨てずに自分の信じる道を生きていくことが大切なのかなと、思ったりもします。

15日には広島で コンサートがありました。私にとっては、首都圏以外での初の本格的なコンサートとなりました。東京と広島の距離は実際、いろいろなハンデがありましたが、 その分、多くの温かい人の想いに支えられてコンサートの実現に至りました。当日は皆さんのご尽力のかいあって、200人以上のお客様が聞いて下さいまし た。皆さんの思いが結集しているということから、プレッシャーもありましたが、意欲に溢れる演奏者の皆さんにも支えられ、積極的な音楽作りができ、成果が 上がったこと、本当にありがたく、幸せな思いで一杯です。

両親、恋人、友人、自分を応援してくださる方、誰でも人は、多かれ少なかれ、人か ら期待される存在です。人の期待は時に辛く苦しいこともあります。思うような結果が出なかったときは情けないし、悲しくなります。しかし、全く誰にも期待 されない自分を想像すると私は寂しく、恐ろしくさえ感じます。期待されるということは自分を必要としてくれる人がいるということです。こんな自分でさえ必 要としてくれる人がいるのは、本当にありがたいことです。自分の存在自体に挫折することも多々、自己嫌悪に陥ることも多々ありますが、あせらず、でもあき らめずに自分を磨き続けることが皆さんの期待に応えることだと信じ、ウィーンでも頑張ってこようと思います。

ミプロキッズフェア2006 in 東京(講演と指揮)

日時2006年7月1日(土)
場所サンシャインシティ文化会館3階
演奏曲<.th>
  1. となりのトトロ
  2. ルパン3世のテーマ
  3. プリンク・プランク・プルンク
  4. 星に願いを
  5. アイネ・クライネ・ナハトムジーク(1・4楽章)
演奏
  1. ヴァイオリン1st:岡崎晶子
  2. ヴァイオリン2nd:北島綾乃
  3. ヴィオラ:戸谷智子
  4. チェロ:松谷明日香
  5. コントラバス:野田浩次

イントの三枝さんのご紹介でいただいた機会、本当に有意義に過ごすことができたと思います。

前半は、これまでの私の半生(反省?)をお話しました。同じ障害を持つ子供たち、そしてその子を持つご両親の方に希望を持っていただけると何より幸せです。 私がモーツァルトのようになにか特別なものを持って生まれたわけでもなく、誰でも、希望を持ち続ければ理想の自分に近づけるということをお伝えしたいと思 いました。

後半は演奏ですが、特に「指揮者コーナー」が好評だったようです。みんな積極的に手を挙げてくれました。演奏者の皆さんも、少し も手を抜くことなく、真摯に、積極的に音楽作りをしてくださり、心から感謝しています。こうした活動は私の音楽人生において「使命」だと思っています。9 月に同様の企画を神戸で行うと伺い、ウィーンから駆けつけることを決意いたしました。一人でも多くの方の「希望」のきっかけになれたなら、こんな幸せなこ とはありません。

東京フィルハーモニー管弦楽団 文京区中学校音楽教室(ゲスト出演)

日時2006年5月9日(火) 14時
場所文京シビックホール
演奏曲モーツァルト 「フィガロの結婚」序曲
(その他の曲は 指揮者の鈴木織衛さんが担当)

中学校時代の音楽の先生の格別のお引き立てを頂き、夢の舞台が実現しました。なんと、東京フィルの指揮台に立つことができたのです!プロオケのコンサートデ ビューです!リハーサルの最初の一振り、実に緊張しましたが、直後から音楽作りを楽しむことができました。自分のほんの些細なサインや表情に見事にオケが 反応します。「フィガロの結婚」序曲の生き生きとした雰囲気を前面に出した演奏にしたいと考えていました。

本番では、まさに私の意図をしっ かりと汲んで下さり、文林中の後輩を含めた文京区の中学生の皆さんに、私のメッセージを伝えることができたと思っています。指揮者の鈴木さんも大変温かく 迎えてくださり、大変ありがたかったです。学生に分かりやすい言葉で、音楽により親しんでもらえるような企画を考えていらっしゃる鈴木さんは将来の自分の 理想像の一つだと思いました。素晴らしい機会を下さった越智先生に改めて心より御礼申し上げます。

2006年5月のご挨拶

4月は、ざまのコンサートも大成功に終わり、過ぎてみるといい思い出が残るように思いますが、真剣 に思い出すと、実は、日常の些細なことが全部裏目に出て、毎日毎日、「何でこんなについてないんだろう?」、「お払いが必要!?」と思う一ヶ月でありまし た。乗る電車が止まったり、忘れ物をしたり、外食しても美味しくなかったり。でも、それは、今月のためにあったのかなと思えるような一ヶ月でした。

一 つはシメオン・ピロンコフ先生との出会いです。日独楽友協会というセミナーに初参加し、先生の指導を受けたのですが、棒の振り方に終始することなく、音楽 をどう歌わせるべきか、それは何故か?歴史的な背景や流れを丁寧に説明して下さいました。個人の好みとか趣味を超越した概念をちゃんと説得力を持ってお話 になり、とても勉強になりました。温かいお人柄もとても印象的でした。

二つ目は下野さんと金聖響さんのベートーヴェンのエグモント序曲につ いてレッスンを受けることができたことです。(ご両名とも「先生」と呼ばれることがお嫌いです。)この曲は3月のMFLの本番でも取り上げた曲であり、自 分でも練り上げた、イメージの出来上がっていた曲であったのですが、そこにあった自分の慢心、油断、底の浅さそして一つの表現に凝り固まっている姿勢をま ざまざと指摘してくださいました。楽譜・和声進行に忠実であることの難しさを教えてくださった下野さん、表現の多様性、小節線にとらわれない音楽の捉え方 を教えてくださった聖響さん。言葉で表現するとお二人は対照的なようですが、根本は同じであると私は思っています。自分の甘さを痛感する厳しいご指摘もあ り、自分にとってとても貴重な時間であったと思います。

最後に、仙台フィル、東京フィルの指揮台に、生まれて初めてプロのオーケストラの指揮台に上ったことです。仙台フィルは副指揮のオーディションでした。残念ながら不合格でしたが、「エグモント」序曲を最後まで演奏することができました。

東京フィルは、文京区の中学生のための音楽教室のゲスト指揮者としてです。(中学時代の音楽の先生、O先生のご尽力、そして温かく迎えてくださった当日のメ イン指揮者の鈴木織衛先生に改めて心より感謝を申し上げます。)。こちらは「フィガロの結婚」序曲です。憧れの指揮台、どちらも大変緊張しましたが、今の 自分の表現力をめいいっぱい使うことができたと思っています。聴いてくださった中学生の皆さんの心になにかメッセージが届いていれば、とても幸せです。

ど ちらのオケでもメンバーの皆さんの反応はとても早く、自分が「抑えたい」「出したい」と思って少し表情に出すだけで音が変わる、その集中力と反応の細やか さに驚きました。一生懸命演奏してくださった皆様に、心よりお礼を申し上げます。ひとまわりもふたまわりも成長して再びあの指揮台に帰ろうという気持ちを 強く持ちました。

辛いことがあっても、苦しいことがあっても、なにかいいことが次に起きる、あきらめてはもったいない!私はそう信じています。

ざま弦楽アンサンブル 第10回ふれあいコンサート 「モーツアルト?モーツアルト!」

日時2006年4月23日
場所ハーモニーホール座間
演奏ざま弦楽アンサンブル
演奏曲
  1. J・S・バッハ シャコンヌ (弦楽合奏版)
  2. モーツァルト 音楽の冗談
  3. モーツァルト アイネ クライネ ナハトムジーク

ついに「第10回」という節目を迎えたざま弦楽アンサンブル。私が「卒論が終わらない~!」とか「車の免許取得って難しいんですね...」とこぼしていたよ うな時期から足掛け8年という長い年月お付き合いをさせていただき、積み上げてきた10回のコンサート。最も長いお付き合いをさせていただき、「あうん」 の呼吸が、私たちの中にあるように思います。

今回は、私の好きなモーツァルトとバッハのシャコンヌ。シャコンヌ(クラウディオ・アバドの 父、ロベルト・アバド編曲)は練習を重ねるたびに、音楽の奥の深さを思い知らされるようでした。「音楽の冗談」は初めて管楽器のエキストラを迎えて、管弦 楽の音楽に挑戦しました。アイネクライネと合わせて、どちらも、モーツァルトが父を亡くした直後の同時期の作品。聞き比べも大変面白かったと思います。安 定感のある良い演奏になっていると思います。楽しく音楽を作るこの団体の雰囲気が良く出ていたのではないでしょうか。私を育ててくださった「ざま弦」に感 謝し、少しでもご恩返しできるように頑張りたいと思います。

2006年4月のご挨拶

2ヶ月も更新が遅くなってしまい、大変申し訳ありません。まず、3月21日、MFL管弦楽団のコン サートにいらして下さった方に心よりお礼を申し上げます。有ありがとうございました。今回もソリストの東京フィル首席チェロ奏者の黒川先生をはじめ、N響 OBの渡辺先生、その他たくさんの方に支えていただき、コンサートを無事開くことができました。改めて御礼を申し上げます。

本番終了後の打 ち上げの際、黒川先生のお言葉でとても印象的なフレーズがありました。「・・確かにアマチュアの皆さんの音楽への熱意、情熱を感じます。でも、私たちプロ は、皆さんアマチュアの方々の何倍も音楽に対して情熱を持っていることを知っていてもらいたい!」先生は、音楽を本当に作り上げていくことは、難しく、技 術、経験が必要だけれど、その裏には地道な努力と、それを支える深い情熱があることをおっしゃりたかったのだと思います。と同時に、音楽が好きなことでは 誰にも負けない!という自負、誇りを持つことが、音楽家にとって最も大切なのだと肌で感じました。そしてそれは単に「好き」で終わるのでなく、「思い入 れ」を持つことであり、大きな目で見た音楽の流れ、細かく見た和声の移り変わり、響き、ひとつひとつにこだわりを持ち、イメージを持ち、そして追求するこ となのだということを、黒川先生は、演奏を通じて、私たちに伝えてくださいました。

また4月はざま弦楽アンサンブルの定期コンサートがあり ました。モーツァルトイヤーを記念して、今回はモーツァルトを中心に取り上げました。クイズなどを織り交ぜながら、(みなさんはモーツァルトの本名、フル ネームで言えます?子供は何人いるか知ってます?答えは「過去のコンサート記録」で。)モーツァルトの音楽をご紹介しました。音楽の楽しさ、豊かさ、温か さを演奏する側にも、聴いて下さる方々にもお伝えしていくことが自分のライフワークであると思っています。こうした活動をいつまでも続けていきたいと思い ます。

MFL管弦楽団 第5回定期演奏会「貴方がいたから」

日時2006年3月21日(祝)
場所三鷹市芸術文化センター 風のホール
チェロソロ黒川正三(東京フィル 首席チェロ奏者)
指揮宮野谷 義傑
演奏曲
  1. ベートーヴェン 『エグモント』序曲
  2. ドヴォルザーク チェロ協奏曲ロ短調 作品104
  3. ブラームス 交響曲第1番ハ短調 作品68

人間、誰でも自分の人生を振り返ったとき、「あの人がいたから、今の自分があるんだ」と思える人がいると思います。今回はブラームスにとってのベートーヴェ ンの存在、ドヴォルザークにとってのブラームスの存在に特に光を当てながらコンサートを進行いたしました。どんな曲にも、作曲に当たって、いろいろな人の 想いがこもってるということが大きなテーマです。

コンサートぎりぎりまで、ソリストの東フィルの黒川先生やトレーナーのN響OBの渡部先生 のご助力をいただき、なんとか本番にまで持ってこれたという感じです。ブラ1の最後、崩れてしまったことは、やはり全員そろっての練習が少ないことが原因 だと思います。定着メンバーの増員が今後の大きな課題となりそうです。私は留学でこのオーケストラを離れますが、より一層のMFLの発展を願ってやみませ ん。

2006年3月のご挨拶

こんにちは。三寒四温の季節がやってきました。暖かかったり、寒かったりと毎日めまぐるしく変わっ てますが、皆さん体調はいかがでしょうか?私は、日々の忙しさのお陰でしょうか、結構元気にしております。去年は花粉症デビューかと思われた時期もあった のですが、幸い今のところ正式デビューは免れているようです。

私事ですが、今月11日で31歳を迎えます。学生の頃、想像していた自分の 31歳の姿とは残念ながらいろんな意味でかけ離れているなと正直思います。31歳というのはもっといろいろな意味で大人で、思慮深くて、知識が広くて、自 制的で、感情が安定した人間だと思っていたのですが、実際自分がなってみると、子供の延長線上に大人があるという感じです。記憶力や思考能力が鈍くなり、 ずるいとこだけ大人になってしまった、そんな感さえあって、自らが残念な気がすることもあります。

自分を弁護するわけではありませんが、現状に満足しているわけではないことが唯一の救いなのだと思います。20歳から大人という区切りはあくまで社会一般が決めたことです。満足をしない限り人間 は死ぬまで、七転び八起きしてでも、(七転八倒では困りますが)、自己を改革し、一歩ずつでも成長できる、そう思います。30代を迎えた今でも、実現した い夢があります。自分に情けなさを感じ、非力さを感じたときでも、決してあきらめないことが大切。そう言い聞かせて31 歳の一年も前向きに頑張っていこうと思います。家族、友人、恩師、いろんな人の思いや優しさのお蔭で無事、31歳を迎えることができたのですから。
今 月21日、私が指揮をしておりますMFL管弦楽団の第5回定期演奏会が、三鷹市芸術文化センター、風のホールで催されます。今回は「貴方がいたか ら・・・」と題し、音楽の背後に隠された人間関係をご紹介したいと思います。芸術家同士の支えあい、愛する人の存在、作曲背景をご紹介しながら、音楽を通 して作曲家の人柄を感じていただける、そんな場になれば幸いです。そして、今、自分があるのは「貴方がいたから」、そんな人のことを思い出して、明日の活 力につながればと思っています。

演奏する人にとっても、聴いて下さる人にとっても、心に残るひとときにしたいと思います。お時間のある方はぜひ、いらしてください!

2006年2月のご挨拶

こんにちは。2月はコンサート準備で忙しく、ついに更新ができませんでした。毎月ホームページで私の消息を確認して下さっている方々、ご心配をおかけして申し訳ありませんでした。

1月に博多に行ったばかりでしたが、2月はコンサートの企画打ち合わせのために、広島へ行きました。博多のからの帰りは「青春十八切符」でしたので、途中下 車した広島からでも丸一日以上かかりましたが、今回は往復新幹線。片道4時間、今更ながら新幹線の速さには驚かされます。(飛行機のほうが速いのですが、あまり得意ではありません。。そう、のだめカンタービレの某誰かさんのように。別に辛い過去とかないですけどね。。)

広島では「もみじ作業所」というところに伺ってきました。今まで大変不勉強で、作業所という場所を訪れるのは初めてのことでした。私よりずっと障害の重い方々が、おひとりおひ とりの持てる力を最大限生かして、一生懸命に仕事に取り組み、自立していらっしゃる姿に、本当の力強さを感じました。また、歌や詩、そして絵など、普段何 気ないと思えることに対する感覚の鋭さ、自分を表現したいというエネルギーの圧倒的な大きさに、同じ「障害者」であり、「表現者」である原点をまざまざと 見せてくださったようで、負けて入られないという気持ちを強く持ちました。もみじ作業所の皆さんが主催されるコンサートは、広島厚生年金大ホールが満員に なるほどの盛況ぶりで、聴きに来られた方がみな、「大きな元気をもらった」と感想をおっしゃるそうです。私もそういうコンサートを持つことが、自分のひと つの目標だと再認識いたしました。

本当に幸せなことですが、今年の夏に、そのもみじ作業所のみなさんと、私のジョイントが広島で企画されています。まだ企画段階ですので、具体的な内容については何も申し上げられませんが、実現できたらこんなに嬉しいことはありません。与えられた素晴らしい機会を生かせるように、その日に向けて、自己を磨いていきたいと思います。

2006年1月のご挨拶

2006年の年賀状画像
新年、明けましておめでとうございます。(明けて早くも一ヶ月近く過ぎてしまいましたが。。)本年もどうぞ、宜しくお願い致します。

年 末年始、私は博多へ行ってまいりました。温泉あり、美味しい食べ物ありと博多を満喫してまいりましたが、本当の目的、指揮の勉強も大変充実したものでし た。今日本全国のオーケストラでご活躍中の下野竜也さんに、実際にオーケストラを前にしてご指導していただける貴重な機会でしたので、年末年始のあわただ しい中ではありましたが、非常に参加してよかったと思いました。

課題曲は2曲でしたが、楽譜の分析(形式、和声など)、作曲家の個性、当時 の楽器の特性と現代の楽器の特性について(響きやバランスなど)、棒のテクニック。それぞれひとつひとつのことが奥が深く、とても充実したセミナーでし た。九州各地から集まってくださったオケのメンバーの方々がとても温かく、音楽に積極的でそのままコンサートをしてしまいたいくらいの雰囲気がありまし た。

また先日は、ベルギーを中心にヨーロッパでご活躍中の大野和士さんの公開講座を聴いてまいりました。興味深かったのは二人の歌手の方を 相手に、実際にアリアを仕上げていく過程の大野さんの指摘でした。以前、合唱の下振りをさせていただいたプッチーニの「ラ・ボエーム」が取り上げられ、歌 詞に隠された意味、調性・転調が暗示する内容、イタリア語の語感に関する指摘など、非常に細かいことのようで、実はそれが音楽の「命」ともいうべき根幹 で、プッチーニの意図を最大限汲み取るということの奥深さをまざまざと感じました。
音楽を感じるということはとても大切なことだと思いま す。同じメロディを弾くのでも、そのメロディ自体が持つ魅力を感じて弾くのと、ただ弾くのでは雲泥の差があります。しかし、もう一歩進むと、感じるだけで なく、理解することが大切です。音楽の構成がどうなっているか?どうしてこう書かれているのか?どうすればもっとも効果的に演奏できるのか?それは感じる だけでは限界があり、より深い音楽の知識、他の芸術、言語、歴史など多分野にわたる教養が必要になってくる実に興味深く、そして無限の可能性ゆえに手強い 世界が広がっているのです。

今年は今までに増して、この手強い世界にチャレンジをしていこうと思っています。キーワードは今年の干支のよう に、「音楽の骨の髄まで味わう」です。今感じている、今見えている部分が全てではない。もっと奥があるということをいつも忘れず、今年も音楽に取り組んで まいりたいと思います。