2004年10月のご挨拶

こんにちは。やっと晴れ渡りましたね!本当にうんざりするほど今月はよく雨が降るものです。出かけ るときに限って土砂降りの雨、台風。1ヶ月近く入院した時以来、久しぶりに、自分が太陽によって生かされていることを痛感しました。今月後半は、気持ちの いい日が続いてほしいものですが、もう次の台風が顔を覗かせているようです。

先日、メジャーリーグ、マリナーズのイチロー選手が前人未到の 年間262安打を達成しました。これまでのシスラー選手の記録を抜いた瞬間を、幸いテレビで見ることができたのですが、ものすごい大歓声の中、今まで真剣 な表情を崩さなかった彼が、本当に嬉しそうな表情になったとき、マラソンのゴールシーンのような感動を感じて目が潤んでしまいました。(当のイチロー選手 は泣かないのに)

長いシーズン、毎日毎日続く野球人生の中の1球1球、走塁の一回一回、身体のコンディションも精神力もベストを尽くして、 ヒットを一本一本積み重ねてきた結果であることを思うと本当に頭が下がります。プレッシャーや気合、失望といったものをあまり表に出さない彼も、スランプ のときや記録達成の前には眠れないこともあったと彼は明かしています。決してプレッシャーや不安を感じないのではなく、彼はいつも真正面に向き合って戦っ ていたのだなと知りました。
イチロー選手は、誰もが認める練習の虫だそうです。そして、練習の後、チームメートがあきれるほど長い時間をか けて、毎回自分のグローブを磨いているそうです。集中力、感謝の気持ち、こういったことを日々の繰り返しの中で忘れないことが、イチロー選手の素晴らしい 点ではないかとおもいます。

私の敬愛する指揮者小林研一郎先生は、こう仰っていました。「私たち指揮者は自分で音を出さない。演奏者の方に 音を出していただかなくては成り立たない。だから、指揮者はせめて、棒の一振り一振り、正確に、かつ、全身全霊を込めて振らなくてはならないんだよ。」 と。またこうも仰っていました。「私たちの演奏する音楽は、自作のものでない限り、当然そこにあるものでは決してない。昔の作曲家が魂を削って作り上げた もので、それを多くの人が受け継いで、今われわれの手元にあることを忘れてはならない。」と。先生はずっと、コンサートもリハーサルのときも、指揮台に上 がる前には一礼をされます。先生もまた、日々の中で自分の信念を忘れずに、積み重ねていらっしゃる方だと思います。

口で理想を言うのは簡単 です。人を批評することはたやすいことです。ですが、甘えることなく自分を見つめて反省をすることは、勇気が要り、本当に難しいことです。相当の体力、気 力が必要なことだと思います。さらに日常を重ねていく中で常に持ち続けることは本当に至難だと私は思います。
イチロー選手は、記録達成の瞬間も涙をすることがありませんでした。これは、まだ自分がゴールに達したとは少しも思っていない、まだ戦いの最中であるという自覚があるからなのでしょう。国民栄誉賞の打診も、野球人生が終わるまで辞退すると発表したようです。

私も自分にでき得る範囲内で、何かを積み重ねるべく、日々戦っていこうと思います。