2007年6月のご挨拶

リヒャルト・シュトラウスの墓前にて
こんにちは。ウィーンは最近日中30度近くまで上がる暑い日が続いています。突き刺すような厳しい日差しですが、湿気が少ないので日陰に入ると心地 よい空気に包まれます。朝5時には明るくなり、21時が日の入り。本当に一日が長く感じられます。(夕ご飯食べ終わってもまだ明るいなんて。)寒く暗い冬 と、暑く明るい夏の急激な差が、ヨーロッパの伝統音楽に表情を与えたのかもしれません。

今回ウィーンに住んで、より親しみを感じるようになった作曲家の一人にリヒャルト・シュトラウスがあげられます。それまでは曲によってはどこか、故意に音が多すぎる、耽美的、華美すぎる印象がありしっく りこなかったのですが、1900 年前後のウィーン分離派のワーグナーの建築やクリムトの絵画、そしてフロイトをはぐくんだウィーンで聞いてみると、なるほどと感じられました。(これはシェーンベルクの初期の作品「グレの歌」を聴いたときにも強く感じました)幸い、オペラ座では彼のオペラの特集が組まれていたので、多くの演目を見ることが出来ました。

さらに、彼の生まれた町ミュンヘンと晩年を過ごした町ガルミッシュ=パルテンキルヒェンに行く機会もありました。ガルミッ シュは大都市ミュンヘンから鉄道でわずかに2時間ですが、アルプス山系の豊かな自然に包まれた本当に美しい町です。(天気があまり良くなく、残念ながらド イツの最高峰ツーク・シュピッツェは見えませんでしたが)ガルミッシュの街並み、風景は次の日にミュンヘンフィルの演奏で聴いた「四つの最後の歌」のもつ 雰囲気、空気そのもので非常に感動的でした。リヒャルト・シュトラウスの曲にはしばしば鳥の鳴き声が出てきます。ホルンの使い方ももアルプスホルンを思わ せる響きがあります。この壮大な自然が彼に作曲のインスピレーションを与えていたことがよく分かる風景でした。クラシックではベートーヴェン以降特に、ほ とんどの作曲家がインスピレーションを得るために「自然」を必要としていたように思います。

ミュンヘンでは、彼の生家のあった場所と、ミュ ンヘンフィル(ティーレマン氏指揮)のコンサートに行きました。ミュンヘンといえば、白ソーセージとビール。たんまり食べて飲んできました。私はミュンヘ ンが好きで、3度目の訪問でしたが、訪れるたびに必ず足が向いてしまう「ホーフ・ブロイハウス」にも行ってきました。(しかも二日連続。)

8年前に来た時は巨大1リットルジョッキのビールを飲んでも、そんなには酔わなかったと記憶しているのですが、今回は年のせいでしょうか、大変なことになり ました。酔って車椅子で石畳の上は絶対よくありません。頭が縦にガクンガクン揺れて、どんどん平衡感覚を失い、ホテルに着いた時は前後不覚でした。人生初 の本格的な酔っ払い体験でした。付き添いがいなければ、どうなっていたことやら。

ウィーンでの生活も残り少なくなってきました。来た当初は ウィーンの人たちのそっけない雰囲気や(レストランの店員とかレジとか挨拶や愛想がない人が信じられないくらい多い)建物の古さ(段差ばかり)、路上のごみや犬の●、何より食事が口に合わないことに閉口していたのですが、最近は交通網のバリアフリーの充実度、自然が豊かなこと、人口密度が東京よりもずっと 低いこと、町が小さくて効率的で、そして何より毎日演奏されるコンサートやオペラの水準の圧倒的な高さに、ヨーロッパのどの都市よりも魅力を感じていま す。1年近くここに住んでいて、やり残したこと、勉強すべきだったこと、体験すべきだったことがまだまだあるような気がして、最近特に気が焦ってきています。

とはいってもユーロはついに165円を突破しました。全ての値段が日本の1.5倍以上という感覚でとてつもなく厳しいので、もうそろそろちょうど潮時(限界?)なのかとも思っています。7月・8月、もう一段階のレベルアップを目指してラストスパート、頑張ろうと思います。