2008年8月のご挨拶

近くの公園にてd51と
毎日、じめじめとした湿気と強い日差しにぐったりとしそうなくらいの暑い日が続いていますが、皆さんはお元気ですか?

今月は北京オリ ンピックに夢中な方も多いかもしれません。ヨーロッパで開催していた年は、時差の関係で、夜中の生中継を見ることができた、日中お仕事をされている方も、 今回はなかなか見られないのではないでしょうか(寝不足にならずにすむのはよいことなのですが・・)。僕は、水泳の北島康介選手の大活躍に心を打たれまし た。。彼は同じ文林中学校出身、いわゆる「後輩」なのですが、とんでもない!物凄い精神力とたゆまぬ努力にただただ感服するばかりです。とかくメディアは 結果、メダルに言及しますが、どんなスポーツもそこまでの努力と本番、追い詰められた時の精神力こそが、感動を呼ぶのだと改めて感じました。

先 日の終戦記念日に、かしわ哲さんのインターネットラジオkizznaのアーティストへの熱い呼び掛けで、「平和を叫ぼう」というイベントに参加してきまし た。世界唯一の被爆国である日本のアーティストこそ、もっと音楽活動を通して、戦争の悲惨さ、平和の重さ、命の尊さを世界に先駆けてアピールしていくべき だという情熱と、かしわ哲さんのお人柄に魅かれてなにかお力になれるならと思って代々木公園に向かいました。

参加されたほかのアーティスト は、ロックやポップのミュージシャンの方々で、すばらしい歌声をお持ちだったり、ギターやハーモニカ、パーカッションをされる人ばかりでした。でもこんな 時、自分で音を出すことのない指揮者というのは実に!無力です。今回は、いつも持ち歩いているリコーダーで参加させていただきました。最近、人前でリコー ダーを吹くこと、しかも路上ライブなんてあまりしたことがなかったので緊張しました(言い訳・・)。でも夏の青空に吸い込まれていくリコーダーの音色は、 自分で吹いていても気持ちよかったです。ジャンルを超えて素敵なアーティストの方々とお知り合いになれたことも貴重な時間でした。

「一人の 人間が世界平和を願う」、それはあまりにも規模の大きい願いでもあり、ある意味、自分の力をみていない現実逃避であるような気がしていました。人間が生き ていく以上、民族、宗教、政治の問題がなくなることはなく、そしてどんな人間も絶対に自分の命、家族の命を守る、そして生活をより豊かにしたいという欲が ある以上、争いは無くなることはないのではないか、そういう冷めた考えも持っていました。

でも、だからといって、あきらめて我々アーティストがなにもしないというのは間違っていることに気づきました。確かに、音楽家には、政治上の問題、民族の紛争に対してなにか具体的な解決策も持ち合わせているわけではありません。

で もアーティストは持ち合わせているはずです。戦争に苦しみ、死んでいった人の悲しみ、無念さを察する感性や想像力を。そして、それを音楽、絵画によって、 文化や言葉の違いを超えて人の心に訴える表現力を。なにより、芸術を通して、人間を愛し、互いに理解し信じることの素晴らしさも知っているはずです。
その日、シンガーのsawakaさんが歌ってくれたジョン・レノンの「イマジン」の歌詞に私ははっとさせられました。
You may say I'm a dreamer
but I'm not the only one
I hope someday you'll join us
and the world will be as one
な んだ、夢をみたっていいじゃないか。いや、アーティストはむしろ夢をみるべきなんじゃないかと。そりゃ、世界から、個人レベルでも、決して「いさかい」は なくならない。でも、だからといって、何よりも尊い命を奪い合うことはないじゃないか。罪のない子供たちを巻き込むことはないじゃないか。愛する人の死は 誰だってなによりも悲しい。文化は違えども同じ人間なのだから、芸術を通して感動することが同じように、きっといつかはお互い理解しあえる、その夢に向け て、暴力ではなく相手を理解しようと努力し続ける、そんな「平和」への理想を、胸をはって訴えかけていくことにこそ、意味があることに気づくことができま した。

来年の8月15日は、賛同してくれる演奏家の皆さん(プロ、アマ問わず)と一緒に参加できたら嬉しいなと思います。(本業の指揮で参加をしたい!)ぜひ声をかけてください!