2004年8月のご挨拶

こんにちは。暑い日々が続いておりますがお元気ですか?今年、東京は都心部で7月6日から「真夏 日」(昼間の最高気温が30℃以上になった日)が38日連続(8月12日時点)となり、気象庁が大手町で観測を始めた1923年以来、95年の37日(7 月23日~8月28日)を抜いて記録更新となったそうです。

「記録更新」といえば、今年は「オリンピック」の夏です。毎回、さまざまな種目 で、努力、集中力によって作られてきた驚異的とも思えた過去の記録が、塗り替えられて、大会新記録、世界新記録が生まれていく様をみると、世代を超えて積 み重ねられた経験と努力による人間の進歩のすばらしさをつくづく感じます。

それと同時に、オリンピックで「自己新記録」を、出すことができ る選手たちにもつくづく感服します。4年間積み重ねてきたもの全てをかける大舞台で、自分の最高の姿を表現できる精神力がすばらしいと思います。どんな舞 台でも、自然に身体が動くように練習や経験を積めば積むほど、そこから冷静な判断と自信を得ることができます。しかし、逆に積み重ねたものが大きければ大 きいほど、失うことへの恐怖、失敗、ケアレスミスへの不安、そして周囲への期待から来るプレッシャーに押しつぶされそうになることも事実です。そんなプ レッシャーに打ち勝つヒントを、最近スポーツ選手の表情や言葉から得ることができました。キーワードは「信念」「勇気」「感謝」です。(会社の壁に貼って ありそう・・ですが)これからの音楽人生の中で、そして音楽に限らずちょっとした困難に遭遇した時に、思い起こせたらと思います。

まず、 「信念」。自分の目標を最後の最後まで見据えて、あきらめないこと。集中力こそが、不安や恐怖が脳裏によぎることを防ぐ最も大きな手段だと、私は思いま す。スポーツでも、演奏でも、思いもよらぬミスに動揺し、そこから崩れていってしまうことがあります。そんなときにも、自分の目標はいったい何なのか、再 度確認して最後まであきらめないことが、結果を導くのだと思います。
そして「勇気」。さまざまな勇気が必要だと思います。信念を貫く勇気。 周囲の期待に惑わされず、等身大の自分を認める勇気。その中で印象的だったのは、テニスの杉山愛選手の言葉にあった「自分の未来を信じる勇気」です。「特 に根拠があるわけではないけれども、自分は将来、必ず目標に到達できると信じている」と彼女はインタビューの中でおっしゃっていました。彼女には遠く及ば ない自分ではありますが、でも私も共通の思いがあります。自分は他人の人生を生きることはできない、自分の人生しかない。その人生、必ず自分の望んだ方向 に進んでいくと、根拠はないのですが、私もそう信じています。そしてこれからも、もっと強く自分を信じていこうと思います。

最後のキーワー ドは「感謝」です。柔道の谷亮子選手が「今、柔道をできることに、周囲が支えてくれていることに感謝している」とおっしゃっていたときに、彼女の強さの秘 訣を感じたように思いました。一流のスポーツ選手も、一流の音楽家も共通していることは「表情が輝いていること」です。今、自分が好きなことに没頭できる 環境に感謝し、心から楽しんでいるから表情が輝いているのだと思います。「ピンチの時こそ、自分をアピールするチャンス到来と思って感謝する」という長嶋 茂雄氏の言葉もすばらしいと思います。(この方にプレッシャーは無縁な気もしますが・・)困難なとき、不安なとき、この「感謝」の気持ちを忘れがちです が、自分の壁を乗り越えるチャンスだと思って、チャレンジできることを感謝して、立ち向かって生きたいと思います。

今月はずいぶん長い文章 になってしまいました。読んで下さり、ありがとうございます。(ぜひ、ご感想をメールでお送りください)年に1回といった大きなイベントや、大人数の人前 といった状況に陥ると私たちはプレッシャーを感じるわけですが、思えば人生の一瞬、一瞬がそのときし来ない唯一の機会ですし、人目のない時など本当はない はずです。日常の細かいことでも、常にベストを尽くすように、かといって身体的、精神的に無理をするわけでもなく、ただ前向きにチャンスを生かしていきた いと思います。

がんばれ、日本!がんばれ、一瞬に賭けてきた選手たち。