2005年8月のご挨拶

早くも残暑の季節です。関東を直撃した台風一過で、今年も厳しい残暑になりそうです。8月の更新と いいながらも、8月も半ばを過ぎてしまいました。今年の夏は地震あり、ロンドンでのテロあり、政変ありとなかなか大変な夏でした。来月には選挙が控えてい ますね。(私は郵政民営化賛成であります。郵便貯金を国が勝手に高速道路につかってしまって、一部の官僚、国会議員が太るような制度はやめなくては!・・ 話が脱線しました。。)みなさんはどんな「夏」でしたか?

私は、先日、茨城県いわき市で、小林研一郎先生の指揮セミナーに行ってまいりました。たった二日間、人数も30名弱という大勢のグループレッスンではありましたが、現地のいわき交響楽団のみなさんのご協力をいただき、大変内容の濃い時間となりました。

小林研一郎(愛称コバケン)先生は、私がまだ大学在学中に北海道女満別で開かれていた指揮セミナーで、指揮棒の持ち方から指揮の基本を教えてくださった私の 原点とも言える先生です。そのセミナーの最終日、プロの弦楽四重奏を前にモーツァルトのアイネ・クライネ・ナハトムジークの冒頭を振ったのですが、(その 瞬間が私の指揮者人生の最初の一振りでした)、先生は私の棒を見て、「棒に音楽が感じられる。」と力強く誉めて下さいました。その一言があったからこそ今 の私があるといっても過言ではないかもしれません。

以来、数年毎に、なにかにぶつかるたびに、先生に教わるべく、先生のパワーを身体で感じるべくセミナーに参加させていただいております。(毎年参加でなくてごめんなさい。不実な弟子です)。そして今回も大切な一言を頂きました。
そ れは「オーケストラの『気』を集める」ということです。舞台の上での指揮者は、実は舞台裏から出てきて指揮台の上で指揮棒を振り下ろすまでの瞬間で、ほと んどその人の実力が見えてしまうといいます。先生がおっしゃったのはその最後の部分、つまり指揮棒を振りあげる瞬間のことをおっしゃっています。何十人も のオーケストラを前に構えて、「さぁ、これから演奏するぞ・・・」という演奏者一人一人の「気」が充実して、指揮者の棒に集中するその瞬間を捕まえろとい うことなのです。無論、指揮者によってはその「気」を集めることが難しい人もいるでしょう。自分の中にオーケストラに負けないだけの音楽にぶつけられるエ ネルギーを持って指揮台に登ることが必須だと思います。そして互いの持つ「裂帛(れっぱく)の気(先生のお言葉)」が満ちる瞬間を全身の神経を集中して逃 さないこと、まさに指揮の真髄ともいえることを、先生は全力でで教えてくださいました。

言葉で言うのは簡単ですが、実際オケを前にすると非常に奥が深い感覚です。改めて、音楽の道を邁進する決意を新たにしたひと夏でした。