2006年8月のご挨拶

8月は海外留学、その準備に明け暮れてしまったために、ホームページの更新まで手が回りませんでした。定期的にご覧下さってる皆様、ご心配をおかけして申し訳ありません。(もうたびたびの事で心配なさらなくなってしまったことと思いますが・・)

8 月は、二つの指揮講習会を受講しました。ひとつは、ウィーンへ渡るまさに直前、前日と前々日の二日にわたって福島県いわき市で行われた、小林研一郎先生の 講習会です。ヨーロッパに渡る前に、どうしても10年前、最初に指揮を教えて下さり、大きな勇気を下さったコバケン先生のレッスンを受けたいと考え、無茶 なスケジュールをおして参加することにしました。ウィーンへ行く前に、先生の音楽にかける精神の深さを肌で感じることができて、本当によかったと思いま す。先生が私の「裂帛の気合」を褒めてくださったことは、なによりの勇気と自信につながりました。

そして、翌日から台北、アブダビを経由し て憧れのウィーンに入り、ウィーン国立音大のピロンコフ先生の講習会に参加しました。はるか昔、大学卒業前に友人と初めて来た、ウィーン。その時はただた だ、憧れの地へ来たことが嬉しかった。二度目は家族旅行で来た。その時は、いつかここで勉強してみたいと思った。 3度目のウィーン。ついに音楽を勉強するためにここへ来たことが、感激でした。クラシック音楽が伝統として根付き、空気のように当たり前に存在するこの地 で勉強できるのはこの上もない贅沢だと改めて思います。

講習会の後半はチェコの都市、オロモウツに移動し、実際にオーケストラを前にレッス ンを受けました。オロモウツは温かい人が多く、パンクしてしまった車椅子のタイヤを、自転車で通行していた見ず知らずの人が、路上で1時間くらいかけて親 身に修理してくださいました。一生忘れえぬ思い出になりました。

ヨーロッパのオーケストラを振ることは生まれて初めての体験でしたが、やは り日本のオーケストラとはどこか響き、雰囲気が違うと感じました。ヨーロッパの音の立ち上がりは柔らかい、そしていい意味でも、悪い意味でもある種の「遊 び」といった余裕、アバウトさがあるという風に感じました。大切なのはその遊びの部分を潰すのではなく、一緒に楽しみながらいい方向に持っていくことだと 感じました。チェコ語は「ドブリーデン!(こんにちは)」しか分からない中、不自由な英語と、身振り、そして表情でコミュニケーションをとる楽しさを体感 することができました。本番はJ.シュトラウスの「こうもり」序曲を振ったのですが、心底幸せで、いい経験になりました。先生、楽団のメンバーの方、そし て生徒の皆さんに、大変お世話になりました。もっと、ヨーロッパのオーケストラと演奏を重ねていきたいと強く思うようになりました。ありがとうございまし た。