2006年9月のご挨拶

こんにちは。今月初めの二週間弱、神戸、東京で仕事を頂いていたため、日本に帰ってきていました が、15日からウィーンに戻ってきています。先日ウィーンの住まいもやっと決まり、ひとまずほっとしています。ウィーンは早くも秋の風が吹いていて、最高 気温が22度くらい、最低気温は11度くらいまで下がります。ユーロが高くて(昔は1ユーロ100円位だったのが去年は135円、今は150円!)何を買 うにも、日本円に換算すると驚きの値段になってしまい、非常に苦しいです。日本円がんばれ!!

今月の神戸、東京の滞在は短いものでしたが、 とても充実した時間を過ごすことができました。神戸と世田谷では障害を持った方とご家族の方を対象にお話をコンサートをする機会がありました。まるで自分 の子供時代を見ているようなとても懐かしい気持ちで、自分の事故のことや小中学校の体験談をしました。いつものように演奏・指揮体験コーナーも設けたので すが、私と同じように、音楽からエネルギーを得て生きてきた方や、自分の指揮棒まで用意してきてくれた子まで参加してくれました。大勢のお客さんの前で (といっても30人くらいですが。)、しかも初めて指揮棒を持つという大変な緊張の中で、それでも精一杯、演奏者に向かって、何かをやってみようとする姿 勢は心打たれるものがありました。聴いて下さった皆さんと一体感のある楽しい時間を過ごすことができました。ご協力下さった、神戸の演奏家の皆さん、ざま 弦楽アンサンブルの皆さん、真摯に取り組んでくださり本当にありがとうございました。

文京区では、母校の文林中学校の隣、文京九中の皆さん を前に1時間ほどお話とコンサートをする機会をいただきました。まさにこれから自分の進路を見定めていく時期、少しでもヒントになればと思って、お話しま した。近年、将来に希望が持てなかったり、自分自身を見放してしまう若者が多い中で、自分自身が唯一無二の価値のある存在であることをぜひ知ってもらいた いと思いました。しかし自分の力量不足で、演奏も含めて1時間強という短い時間で、できる限り多くのことを伝えたいという気持ちばかり先行してしまって、 話をうまくまとめきれなかったことを反省しています。でもみんな、暑い中、静かに、真剣に、時には目を輝かせて聴いて下さって本当に嬉しかったです。

先日、九中の皆さんから作文が届きました。私のメッセージをお一人お一人がちゃんと受け止めて下さったことを知り、感激しました。中学生の皆さんの感性の豊かさ、確かさを改めて知ることができました。作文は私の宝物の一つになりました。

日 本に滞在した時間は、とてもハードでしたが、指揮者として自分がどの方向に進むべきか確認させてもらった時間であったように思います。小泉首相(皆さんが お読みになるころは元首相ですね。)が退任に際しメールマガジンで「いつも何かに守られている、運がいいな、と思いながら、何とか頑張ってきました。」と 書いておられました。この言葉を読んだとき、「あ、一緒だ」と思いました。私もいつも、多くの人に見守られ、支えられてここまでやってこれた、自分は本当 に運がいいと常々思っています。ここウィーンでも多くの温かい人に出会い、支えられています。その私の使命は、音楽や言葉を通じて、今苦しんでいる人、そ してこれから人生を切り開こうとしている若い人たちに、少しでも勇気や支えになれる存在になることなのだと信じています。

自分はまだまだ未熟で甘い人間です。異国の地ウィーンで少しでも自分を鍛えていかねばと思います。「メッセンジャー」としてふさわしい指揮者、そして人間に少しでも近づいていけるよう、ウィーンで頑張っていこうと思います。
ウィーンにいらっしゃる際は、ぜひお声をかけてください。