2006年10月のご挨拶

ウィーンに来て早速、更新が滞ってしまいました。申し訳ありません。
10月2日から ウィーン国立音大の授業と通っているドイツ語学校の授業が始まり、午前中は大学(平日月~木)、午後は語学学校(月~金)の毎日が始まりました。ウィーン 国立音大は、指揮講習会で教えてくださったピロンコフ助教授の特別のご好意により聴講生としてライオビッツ教授の授業を見学しています。世界各地から集 まった(といってもアジア人が多いのですが)指揮者を志す学生と共に勉強できる環境は、音大を卒業していない私にとって、とても刺激的です。ただ、当然の ことながら講義は終始ドイツ語。大学で1年以上勉強していたにもかかわらず、10年前のことですっかり忘れてしまった私にとって、曲目解説の講義は必死に 耳を傾けてもチンプンカンプン。笑いが起こってもなんのことやら。ドイツ語の勉強と予習は必要不可欠です。

ドイツ語の勉強はIKIという学 校に通っています。オペラ座の斜め前にあり、大学とアパートのちょうど中間に位置するので通うにも便利です。これまた世界中から集まった学生たちとドイツ 語の勉強する環境も実に新鮮です。それぞれに持つ文化、感覚の違いも明らかで、どこの国とは申しませんが、授業の流れも気にせず質問に明け暮れたり、人の ものは自分のもの感覚の人がいたり、なかなかに大変です。若い人が多いせいか(下は16歳!)集中力が異様に持続しない人が多い気がします。それでも、根 気よく、丁寧に何度も反復し、宿題もたくさん出るので、着実にドイツ語は身についている感覚があります。

もう一つの大きな目的は、「ウィー ンの音楽を聴くこと」です。和声感、音楽の緊張と弛緩の関係。湯浅さんや下野さんがおっしゃる最も重要な要素を、できる限り自分の身体に覚えさせたいと考 えています。多くの方のご厚意により、私の強引なお願いを聞いてくださり、ウィーンでウィーンフィルのリハーサルを聞く機会を得ることができました。アー ノンクール氏指揮のウィーンフィルのリハーサルを!です。しかも1stヴァイオリンの一番後ろのプルトノすぐ後ろで聞いてしまいました。ウィーンフィルは 思いのほか和気藹々としたリハーサルですが、実に細やかに音楽を作るアーノンクール氏、繊細な音で答えるウィーンフィル。とてつもない音とアンサンブルを 間近で聴く体験は、筆舌に尽くしがたいものがあります。ムジークフェラインの大ホールの響きもいまさらながら驚かされます。まさにホールそのものが楽器と も言える感覚で、ウィーンフィルはこのホールの響かせ方を熟知しているように感じました。ブルックナーの5番は本当に素晴らしかった。(ただ響きは聴く場 所によって幾分違うように私は感じました。)

ただ、最大の難点は車椅子席が少ないこと。舞台が見える車椅子席は1階にたった一つ。あとの車 椅子席は舞台がほとんど見えないバルコンの2列目。立てる人ならバルコン2列目でも舞台は見えますが、なぜわざわざ立てない人を見えない席に?最も安い立 見席のチケットは車椅子は「安全上の問題」により売ってもらえない。(正確に言うと売ってはもらえるが入れてもらえないので要注意)音楽を愛する人が世界 中から集まるこのホールで、たった1席とはあまりに少ない。ウィーン市民も自分が車椅子になったら、1席しかなくなってしまうことに早く気づいて欲しい。 ちなみにウィーン国立歌劇場も4席と非常に少ない。コンツェルトハウスも4席。日本でもそうだが、高齢化社会を向かえた今、車椅子席はまさに争奪戦。車椅 子席の増設を是非検討して欲しいです。