2014年6月のご挨拶

 こんにちは。今年は早くも全国的に入梅になりました。今年の梅雨は長引くようですが、皆様いかがお過ごしですか?先日、大阪から東京へ向かう高速バスが、甲府や八王子での大雨による通行止めのため、中央道から信越道へ急遽迂回する事になり、急遽実家の近くのバス停も通ることなく、新宿、東京へ直行され、到着が2時間以上遅くなるハプニングがありました。仕事より1日早い東京入りでしたので、なんの問題もありませんでしたが、冬の雪の日同様、自然にはかなわないことを痛感しました。

 大阪に住んでもうすぐ1年が経とうとしています。大阪といえば、ユニバ(敢えて略語で)、通天閣、海遊館、ハルカス(・・はまだ行ってない・・)たくさんの観光名所があります。歴史的名所も大阪城や四天王寺、住吉大社などありますが、ここにもう一つ大阪が誇るべき、歴史的観光名所があると思っています。それが「適塾」です!





 「適塾」、緒方洪庵に興味を持ったきっかけは、私が手塚治虫ファンであると言えばお分かりになる方も多いと思いますが、「陽だまりの樹」という作品に触れたときでした。10代で、洪庵先生門下のあの方ゆかりの病院に入院中に読んだからでしょうか、数々の登場人物の中で緒方洪庵の存在感は一際大きく感じられました。温厚さ、厳しさ、勤勉さ。手塚治虫先生のタッチを通して伝わるその人間味に深さに魅了されていたのですが、先日やっとその憧れの「適塾」を訪れることが出来ました。

 残念ながら(想像はしていたのですが)、和室や狭い廊下で建物自体が貴重な遺産であるため車椅子は立ち入り禁止でした。しかし玄関で諦めたくはなかったので、這ってまわることにしました。塾とはいっても当時のこと、そうは広くなかろうと思ったのですが、這って回るにはちょっと広かった(笑)さらに2階へ昇る階段、這い上がろうと試みたのですが、想像をはるかに超える見たことのない急さ!!命あっての物種。さすがに諦めました。。資料の写真撮影も大方禁止で、制限の多い自分にとっては見ることが出来ないものが多くやや残念ではありました。(解説の難読漢字にフリガナがないなど、緒方先生のご遺志と功績を多くの方に知ってもらえるよう、来館される子供やお年寄りなどにぜひもっと配慮をしていただきたい!)

 それでも現地に行って、建物の雰囲気、自筆の書に触れ、緒方洪庵先生、八重夫人をはじめ、数々の門下生、若き日の福澤諭吉、橋本左内、佐野常民、大村益次郎、大鳥圭介、高峰譲吉・・・今の日本の医療や思想の礎になった数々の門下生たちの勉強への熱意、熱気、将来への希望を感じられたような気がしました。

 私は、どんな人生も尊いように、反社会的で破壊的なものでない限り、人々が支えあう社会のどんな仕事も本当に尊いと思っています。生産、流通、サービス、等しく尊いに違いありません。そのうえで、敢えて自分自身の人生を振り返ってみると、命を救う医療と、未来を担う人を育てる教育は、特別に、「ありがたい」と感じる分野です。その2つの分野での功労者、日本近代医療の祖であり、近代日本を築いた数多くの人材を育て上げた緒方洪庵、そして適塾は、大阪が、日本が誇る歴史遺産だと思うのです。


 適塾は正式名称を「適々斎塾」といい洪庵の号が適々斎であったことからきています。その「適々」というのは荘子の書物にある「夫不自見而見彼、不自得而得彼者、是得人之得、而不自得 其得者也、適人之適、而不自適其適者也、……。」 <夫(そ)れ自ら見ずして彼れを見、自ら得ずして彼れを得るは、是れ人の得(とく)を得として、自ら其の得を得とせざる者なり。人の適(てき)を適として、自ら其の適を適とせざる者なり……。>からとったものといわれています。訳は「自分の内なるものを見ないで外のものを見、 自分の内なるものに満足しないで外に満足を求めるものは、これは他人の満足を自分の満足として、われとわが身の本当の満足を満足としないものである。また他人の楽しみをわが楽しみとして、われとわが身の本当の楽しみを楽しみとしないものである……。」

 他人の価値観や評価によって自分の道を決めるのでなく、自分の見極めた自分の個性によって信じた道を進んでいく、そんな勇気を持てるよう、日々精進したいものです。