2003年11月のご挨拶

そろそろ来年の干支が気になる季節になってまいりました。本当に、本当に一年という時間はあっという間なんですね。子供の頃の一年は長かったように思います。「大人になれば分かるよ」と言われ続けておりましたが、本当に身に沁みて分かるようになってきました。

先 日、東京文化会館にバレエを見てまいりました。バレンボイム指揮シカゴ交響楽団による「春の祭典」、「火の鳥」、「ボレロ」というよくばったプログラムで した。シカゴ交響楽団を初めて聴いたのですが、指揮者の私としては、バレンボイムがオケピに入っていてよく見えないのは、当然のことですが残念でした。

ですが、その日は別の意味でとても勉強になりました。それは音楽を身体で表現することの奥深さです。そもそも音楽、音を視覚で表現する。なかなか考えにくい ことですが、絵画や彫刻の世界でもカンディンスキーのように鮮やかに成功した例はいくつもあるものです。ですが、バレエのように身体で表現するということ は、やはり究極であるように感じました。音楽の持つメッセージ、音の表情、音楽全体から構成、細部まで徹底的に吟味した上で、卓越した技術で、見事に身体 で表現していく、見事さに感服しました。

指揮もかなり通じるところがあります。音楽を細部まで勉強して身体で表現するという作業はまさしく 指揮そのものだと思います。(バレエは音楽にあわせて表現しますが、指揮は身体の表現に合わせてあわせて演奏する、そういった意味では正反対なのです が。)深く音楽を理解する、表現を極める、その姿勢を忘れてはならないと改めて思いました。音楽の内容に忠実ながら、バレエのようにしなやかで、時に力強 く、自由な発想の音楽的な指揮をめざして。