東京も大阪も随分寒い日が続いておりますが、皆さんお元気ですか?先日の大雪の日はその日の朝に東京に到着したのですが、着いた時にはもう一面の雪景色、仕事も延期になり散々でした。昨年末に松江に旅行したときも物凄い雪でしたが、雪質が違うんですね。。松江の雪は粉雪だったので車椅子が雪を掻き分け進むことが出来たんですが、東京の雪は、すぐに溶けてべちゃべちゃになってしまうからでしょうか。。前輪が埋まって、まったく動けなくなってしまいます。雪は本当に車椅子の大敵です。。
まずは、もう目前に迫った2月15日(土)にMFL管弦楽団の定期演奏会のご案内をさせていただきます。14時から府中の森芸術劇場ウィーンホールで行われます。今回は素晴らしいピアニスト、金平さんのご協力を得て、ショパンのピアノ協奏曲第1番を演奏いたします。力強い情熱溢れる演奏になると思います。シューベルトの交響曲第3番も若々しい颯爽とした名曲です。お楽しみいただければ幸いです。12日のニュースによると今週末もなんと雪!!?非常にさみしいコンサートになりかねないので、皆様のご来場をお待ちしております!
今月は、コンサートのご案内のためにも、早く更新しなくてはならなかったのですが、なかなか衝撃的なニュースが続き、どうしても思いが言葉になりませんでした。先月末に、現在の指揮の世界でもっとも自由にオケを歌わすことができた名指揮者、アバドさんがお亡くなりになり、とても寂しい思いでいっぱいになりました。癌から回復されて、音楽にいよいよ凄味が増してきて、去年の来日時にはぜひとももう一度生で聴きたいとチケットを確保しておりました。なんとも残念でなりません。今月は名匠アルブレヒトさんも亡くなられました。心よりご冥福をお祈り申し上げます。
そこに追い打ちをかけるように、佐村河内氏のなんともやるせない、悲しい事件が報道されました。音楽の世界で生きている身として、そして、障害を持つ者として、なにもコメントしないわけにもいかないと思ったのですが、あまりに思いが整理できず、今に至ってしまいました。
街中で坂道など、手伝ってくださった方にお礼を申し上げると、「お互い様だから」とおっしゃってくださることがあります。実際には助けて頂いているのは私ばかりでお互い様ではないはずですが、恐縮している私を察して、さらにお気遣い下さる本当に温かい言葉だと思います。時にはご自身が急いでるにもかかわらず、手を差し伸べてくださる方もいらっしゃいます。その方の前で、自分が突\\然歩き出したら、助けてくださった方はきっと大きなショックを受けるに違いありません。周囲の方の温かい気持ちというのは、本当に文字通り「有り難い」ことです。その場が助かるというだけでなく、生きる勇気に直結するものです。苦難を乗り越えて音楽を作っている彼を応援したいと積極的に彼の作品を取り上げ演奏した人、被災地の方、自らが病気にもかかわらず応援活動された温かい方々の心が裏切られる結果になってしまったことが悲しくてなりません。
私は、人が音楽を作り、人が音楽を演奏する以上、その人の人間性が音楽に反映されると信じています。その人の生き様や信念は少なからず、その人の作品や演奏に影響を与えると思っております。あらかじめ申し上げますが、障害の有無が、特別に芸術的価値に影響が与えるとは少しも思っておりません。なぜならどんな人間も生きていく以上、様々な悲しみや悩み、苦難と向き合わなくてはならないからです。大切な事は、その人が困難の中でどう音楽と向き合ったかなのです。その結晶が作品であるからこそ、一つ一つの音楽は、個性を持ち、その輝きを失わないのだと考えています。ですが、昨今、音楽だけでなく、芸術や文芸の世界で、ゴーストライターは実は暗黙の了解であることだといいます。芸術は、その人が時を超えて多くの人の心へ贈る手紙のようなものだと思っています。受け取った手紙が実は代筆だったというくらい、その作品から感動を得た人にとっては、ゴーストの存在はやはり裏切られた感はぬぐえないと思います。芸術に携わる人間として、受け止めてくれる人の心を裏切ることのないよう、心がけてまいりたいと思います。
最後に、先月末、上方文楽の桐竹紋臣さんの実演に触れる機会がありました。表情の変わらないはずの人形が、ほんの少しの仕草の積み重ねによって、美しくも豊かに感情表現される。いつのまにか人形が生身の人間を超えるかのように、見る人に切々と共感を呼び起こす。足遣い、左手遣いの人の阿吽の呼吸のすさまじさ。人形遣いの方の恐ろしいほどの繊細な芸に、自然と涙があふれてまいりました。人の心を打つ芸術とは、本当に奥が深く、生半可なものではないことをまざまざと思い知らされました。
今後とも気が遠くなるほどの長い道のりですが、それでも自分の道を焦らず一歩ずつでも歩んでまいりたいと思います。