2013年4月のご挨拶

 新しい年度に変わり、若葉の季節を迎え日々温かくなってまいりました。3月生まれのだからでしょうか、正月よりも新年度のほうがなんだかまた1年が始まる、そんな気がします。今住んでいる場所は中央線沿線とはいえ都心からは離れていて、豊かな自然が身近に残っています。新緑の季節は、少し外出するだけでとても気持ちのいい贅沢な気持ちになります。

 またちょっと外出すると思わぬ素敵な出会いがあったりします。私は中学生の頃から野鳥が好きだったのですが、当時野鳥図鑑でしかお目にかかれなかった憧れの鳥たちに出会えるのです。カワセミやエナガ、モズにヤマガラ、先日はなんとハヤブサにも出会ってしまいました。小さな鳥の愛らしさ、鷹などの鳥の引き締まった美しさ、それぞれに自然が生んだ魅力があります。そんな出会いは本当に幸せです。朝からシジュウカラのさえずりで目覚めるのは気持ちのいいものです。少し気持ちの塞いだ日でも、ウグイスのさえずりを聞くだけで嬉しくなります。クラシックの作曲家にもおおいに影響を与えたというのは分かる気がします。有名なところではベートーヴェンの田園、マーラーの巨人、メシアンやディーリアス、今取り組んでいるブルックナーの交響曲第4番にも、鳥の囀りがヒントになったといわれているテーマがあります。

 以前にウィーンに留学したときも、ハイリゲンシュタットの新緑や風に癒されていました。ウィーンの気候は東京より変わりやすい印象があります。温かい日差しに包まれたかと思うと、すっと雲によって暗くなったり、突然大粒の雨が降り出したかと思えば、雲間から再び日差しが差し込んだり。それはまさに音楽の流れと同じだ!と感じました。自然の悠久が時空を超えてベートーヴェンやモーツァルトと同じ体験をさせてくれたかのようでした。思えば「自然」と「人工の物」を区別したりしますが、所詮人間だって自然のごく一部にすぎません。どんな生き物も最後には土に帰るのです。だからこそ自然は、故郷のように知らず知らず、人にエネルギーをくれているのだと思うようになりました。

 最後に、皆さんに御礼を兼ねてご報告があります。多くの方のご協力やご声援をいただいておりました、リフト付車椅子申請の件、許可が下りる事となりました。また個別にお礼を申し上げさせていただきますが、この場でも御礼申し上げたいと思います。ありがとうございます。現在は発注をし納品待ちの状態です。ドイツ製の車椅子のため、細かい調整などがうまくいくのか、少々不安はありますが、新しい車椅子で皆さんの前に伺える日を楽しみにしております。

2013年3月のご挨拶

 こんにちは。3月も半ばを過ぎて、春の暖かさが日に日に実感できる季節になりました。そしてお蔭様で11日に、38歳の誕生日を迎えることが出来ました。お祝いのメッセージを下さった皆さま、ありがとうございました。少年のとき、15歳寿命説を勝手に信じていた自分が、その時の親の歳を超える38歳という歳をを迎えられたのは、相方、両親、先生方、音楽仲間や友人お一人お一人のおかげです。温かい笑顔と音楽に包まれ、幸せな日々を歩んでこられた事に心より感謝申し上げます。

 二年前のあの日から、私の誕生日が特別な日になってしまって、3月を迎える前からいろいろ思いをめぐらせておりました。音楽家が絶望の淵に自分は何をできるのか、障害者の自分になにができるのか、自分の存在に自信を喪失したときもあれます。一方で、それでもフランクルの「夜と霧」にあるように絶望的なときでも音楽は人の心を救うと確信し、音楽に取り組む事ができる自分に幸福を感じている自分もいます。しかし、そんな素晴らしい音楽の力をどれほど自分は引き出せているのか、それとも殺してしまっているのか、過去を振り返ると恐ろしく感じます。心の中の整理がつかず、なかなか自分の今の思いを言葉にするのは難しく、書いては消してを繰り返し、更新がここまで遅くなってしまった次第です。

 指揮者は一人では全く成り立たない仕事です。身を削りながら音楽を創り出してくれる作曲家、プロでも、アマチュアでもそれぞれの限られた時間と労力で築き上げた技術で臨んでくれる演奏者、通常その間に人は介在しないのですが、大勢で演奏する時のみ、そこに介在できるありがたい立場です。現場には様々な声があります。楽譜を通して、作曲家の声を聞き、指揮台に立てば、演奏者の皆さんの心の声が聞こえます。演奏者の皆さんの声はいろいろあります。時には厳しい声も聞こえます。でもそうした声を聞いて、自分の心にも耳を傾けながら、コミュニケーションを積み上げて一つの音楽を作り上げていく事が、自分にとって何よりも幸せです。

 40歳の足音が間近に聞こえてきました。少年のときの父、恩師と比べ、なんとも情けない自分の現状、体力の衰え、不惑に程遠い自分の精神に、焦りと孤独と自己嫌悪を覚え葛藤する日々です。とはいえ、どんなに嘆いても、自分の人生、自分の身体、自分の心です。より謙虚に皆さんの声に耳を傾け、地道に、どんな逆境も糧にして、いつの日か、絶望の淵にでも必要とされるような存在に近づきたいと思っております。


   

2013年2月のご挨拶

 こんにちは。ホームページ再開後初めての更新にもかかわらず、遅くなってしまいました。去年は体調管理に随分苦労した一年だったので、今年は健康第一!・・と思っていたのですが、早速、先月末突如として高熱が続き、1週間ほど入院生活をしておりました。

 日々の生活で忘れがちな、自分の健康への感謝、そして生きることへ患者も医者も看護師もまっすぐ向き合う病院という環境が「好き」と公言していた私ですが、今回は、高熱のためか、はたまた入院した病棟が北側で暗く隙間風に悩まされるほど猛烈に古かったためか、手術もなかったのに、気力を奪われてしまいました。(スタッフの皆さんは過酷な環境の中、真摯に頑張っていらっしゃいました。念のため。)

 その病院の病棟では3年後に建て替えるということが合言葉のように聞かれ、冷たい隙間風も早朝6時前にけたたましい騒音のなる暖房器具も「仕方がない」という諦めの空気が、患者にもスタッフにもありました。看護師の仮眠室の暖房器具もある時間になると騒音を出し、よく眠れない人もいるそうです。今までこの環境で頑張ってこられた方々にとっては、あとわずか3年で環境はがらりと変わるという大きな希望をもっておられる、それは理解できます。しかし、その環境を初めて知った私にとっては、あと3年も入院患者やスタッフは我慢を強いられるのか!というのは驚愕の事実でした。

 人は最後まで、その時におかれた状況を改善することを諦めてはいけないと今回、強く思いました。医者は患者の病状を、病院運営者は患者やスタッフの環境を、指揮者はオーケストラの音やアンサンブルを、そしてひとりの人は、自分や家族、周囲の人のよりよい人生に対して、多くの制限や困難、たとえ限界があろうとも、最後まで諦めてはならないと思うのです。これは大いに自分への反省でもあり、叱咤でもあります。意識してなにかを諦めてることは問題外ですが、問題は日常の慣れで無意識のうちに諦めてしまっていることです。自分を省みて、障害やその他の条件を言い訳に甘えたり、諦めたりしていることが多いのではないか、それは実に恐ろしいと我ながら思いました。


 おかげさまで、日々、体力、気力共に戻りつつあります。指揮台に立って皆さんのエネルギーと音楽のエネルギーに触れると、自然発火するように知らず知らず心が沸き立ちます。演奏者の皆さんと生き生きとした音楽を作る共同作業は実に幸せでありがたいことです。2月11日(祝)のコンサートも一期一会、メンデルスゾーン、モーツァルト、シューベルトの音楽を楽しんでいただけるよう、全力を尽くして頑張りたいと思います。もしお時間がございましたらぜひご来場ください。
http://www.miyanoya.com/2012/12/15.html

弦楽合奏と女性コーラスの集い ひな祭音楽会

日時 2013年3月2日(土) 13:30開演(13:00開場)
場所 高井戸高齢者活動支援センター 2階多目的室
曲目 ヘンデル 水上の音楽より「ホーンパイプ」
モーツァルト ディベルティメント第3番
ロジャース サウンド オブ ミュージックメドレー
      他
演奏 THE杉並ストリング アンサンブル
指揮 宮野谷 義傑 (弦楽合奏のみ)
チケット 無料 入場自由