2007年1月のご挨拶

楽友協会の写真
明けましておめでとうございます。

生まれて初めてヨーロッパで正月を過ごしました。家の中にいても爆竹と花火の音がひっきりなしに鳴っていて、まる で戦場のようです。外に出ると、道端では歩くすぐ脇で突然爆竹が鳴ったり、路上で打ち上げ花火をあげたり、大騒ぎです。かなり危険です。広場では年末の市 が立ち、たくさんの豚のぬいぐるみを売っていました。「え!?こっちでも猪年?」と一瞬思ったのですが、豚は新年のラッキーアイテムで、贈り物などにする そうです。(他にもてんとう虫、四葉のクローバーなど)

年越しはお世話になっているウィーンフィルのチェロ奏者FさんとピアニストのUさん ご夫妻のご自宅にお招き頂き、テラスから花火を見せていただきました。見渡せる限りあちこちから無数にあがる冬の花火はとても壮観でした。ラッキーアイテ ムの「豚」の鼻を使ったお料理をいただきました。スライスしてあり、形が少々リアルでしたが、美味しくいただきました。

2006年年末はニューイヤーコンサートのリハーサルを見学させていただくことができました。毎年テレビで見ていたコンサートのリハを見ることができる のは感無量でした。指揮はズービン・メータ氏。私はリハーサルを見るまで、彼の棒さばきはあまりに切れがよく、力強いので、ポルカやギャロップには向いて いても、甘くやわらかいワルツの指揮にはあまり適さないのではないかと思っていました。しかし、リハーサルを見学して、考えは変わりました。やはり世界第 1級の指揮者、多彩な表情と絶妙のタイミングでオケから遊び心と陶酔の音色を引き出していきました。今回は新曲も多かったせいでしょうか、そうとう念入り に何度も繰り返しリハーサルをしていました。ちなみに来年のニューイヤーコンサートの指揮はプレートル氏のようです。

やはり今年のヨーロッ パの冬は暖冬のようで、現時点では東京の真冬とそう変わらないような感覚です。雪も1・2度降っただけでほとんど積もりませんでした。積雪は車椅子には大 敵なので本当に助かります。ただ1日だけマイナス5度になった日がありましたが、この日は寒かったです。車椅子をこぐ手のひらがすぐに冷えて痛くなる、だ んだん感覚がなくなる・・。例年なら毎日こんな感じだと聞かされました。暖冬のまま今年の冬は終わって欲しいものです。

2月8日に広島でコ ンサートがあるため、日本に帰ります。パレットアンサンブルは広島で活躍する演奏家の皆さんが集まって組織された団体です。今回は広島交響楽団のコンサー トマスター、田野倉雅秋さんをソリストにお迎えしてヴィヴァルディの「春」を演奏するなど非常に聴き所満載です。広島の皆様、そして西日本の皆様、ぜひ聞 きにいらしてください!

今年は一層の飛躍の年にしたいと考えています。どうぞ、宜しくお願いいたします。

2006年12月のご挨拶

こんにちは。12月に入り、ウィーンもすっかりクリスマスムードに包まれています。カールス教会の 前の広場もすっかりライトアップされ、クリスマス市で屋台が出たり、移動遊園地があったりと、夜遅くまで賑わっています。今年の9月~11月は、18世紀 に気象観測を始めて以来の「暖かい秋」だったそうで、12月の今でも気温は最低でも2・3度、昼間は10度近くまであがっています。例年なら寒いときはマ イナス20度にもなるそうなので、今のところはとても助かっています。

先日は大学時代の友人に会いにパリに2泊3日で行ってきました。パリ に行くのは数年ぶり2度目でしたが、痛感したのは、ウィーンに比べてパリが大都会であるということ、そして都会であるにもかかわらず多くの地下鉄の駅にま だエレベーターもエスカレーターもないなど、バリアフリーがまだまだ進んでいないということです。レストランやカフェの入り口にもやはり大きな段差がある など、まだまだ車椅子には厳しい街だと感じました。

ルーブル美術館の中の段差解消機は新しくなっていて、以前はいちいち係員を探さなくては 乗れなかったものが、自分で乗れるようになっていました。ただ全ての階段にこの機械が付いているわけではないので、時には遠回りしなくてはならないのは問 題です。(ルーブル、オルセー美術館の入場料は障害者は無料なのであまり文句は言えませんが。)モナリザが入り口からぐっと近くになっていたのには驚きま した。(たどり着くまでに楽になったのは嬉しいのですが、少しありがたみが薄れてしまったような気がするのは私だけでしょうか)
ウィーンは パリに比べると小さな都市ですが、バリアフリーは思いのほか進んでいます。地下鉄は4路線ほとんど全ての駅にエレベーターがついています。中心部を走るバ スは全て低床バスですし、路面電車も半分くらい低床車輌が走っています。交通手段に関しては日本に負けないくらいバリアフリーが進んでいるのではないで しょうか。

ただ、ウィーンの建物は歴史的に古い物が多いので、どうしても入り口から段差があるものが多いようです。建物の中にもエレベー ターの前に数段階段があったり、ひとりで行動するにはやはり厳しい面もあります。オペラ座やコンサートホールの車椅子席がとても少ないことも非常に厳しい です。(毎回争奪戦です)

車椅子ユーザーにとってウィーンにはもう一つ大きな問題があります。ウィーンには愛犬家の方が多いらしく、あちこ ちで大小さまざまな犬を見かけます。みんなきっちりとしつけをされているので、車椅子を見ても(驚きたじろぐ子もいますが)吠えかかったりしてくる犬は まったくいません。大きな犬はハンニバルのように口に金属製のマスクをしている犬もいます(見てて少しかわいそうですが)問題なのは犬ではなく飼い主のほ うというべきでしょうか、道端によく落ちているんです、うん○が。たばこの吸殻もよく落ちていて、路上はとても美しいとは言い難いのですが、犬のう○こは 車椅子ユーザーには大敵です。踏んでしまおうものなら、タイヤを通じて手にまで付いてしまうのです。時には犬!?と思うような巨大なものまで。。暗い夜道 には本当に気を遣います。どうぞ愛犬家の皆さん、宜しくお願いします。

一年の最後のご挨拶が少し汚い話になってしまいました。初めて過ごすヨーロッパでのクリスマス、年末年始が楽しみです。皆様、よいお年をお迎えください。

2006年11月のご挨拶

こんにちは。あわただしくウィーンでの日々が過ぎていきます。先日はウィーンで初雪が降りました。こちらは例年にないほどの暖かさということですが、それでも日によっては最低気温がマイナスになります。これから一体どんな冬を体験するのか今から不安です。

ウィー ンはいわゆる「大陸性気候」で快晴の日が多く降水量が少ないのが特徴です。(海洋性気候の日本とは正反対です)雨が少ないのは車椅子にとって、非常にあり がたいことです。でも、一日の天気は非常に変わりやすい。気持ちよく晴れていたかと思うと、あっという間に雲が出てきて、みるみるうちに暗くなったかと思 うと、吹雪になったり、そうかとおもうと、雪が降ってるのに晴れ間が覗いて、しばらくすると青空が広がる。まるでソナタ形式のよう。表情豊かな音楽はこの 天候がもたらしたのかもしれない。(天気予報は大変。見るホームページごとに予想が違うんです)

日本でも11月はコンサートラッシュですが (ウィーンフィルは今は日本ですね)こちらも負けないくらい素晴らしいコンサートの目白押しです。ギーレン氏指揮のシェーンベルク「グレの歌」、アムステ ルダムコンセルトヘボウ/ハイティング氏指揮のマーラー交響曲第4番、リヒャルト・シュトラウスの歌曲。まさに『陶酔』という言葉しか思い浮かばないほど 繊細で今にも壊れそうな甘く美しい音楽。CDでは知りえなかった後期ロマン派のウィーンの音楽の魅力を身をもって体験しています。

コンサー トやリハーサルでマエストロに会えることも私にとっては魅力です。もちろん日本でもお会いすることはできますが、なかなか厳しい。出待ちであったり、特攻 隊気分で舞台裏に行ったり、覚悟が必要です。ムジークフェラインではそんなことはない。(こわもての警備員の方はいるが実はとても優しい)先日は初めてベ ルナルド・ハイティング氏に会うことができました。実に繊細で一部の隙もない音楽を作り上げた彼は一体どんな人物なのか接してみたかったのですが、会って さらに感動しました。思ったより小柄な方で強いオーラを放っていらっしゃるわけでは決してないのですが、静かで本当に温かく、すべてを包み込んでしまうよ うな大きさを持った方のように感じました。自分が指揮の勉強をしている旨を伝えると、「ぜひずっと続けてください」とおっしゃって下さいました。

先月お会いしたアーノンクール氏、今月お会いしたテイト氏、そしてウィーンフィルのメンバーの方々。今まさに活躍されている音楽家の皆さんに会って、そして その人間性に少しでも触れ、そして言葉を交わすことは、自らの目標、生きる世界を身体で確認できるかけがいのないチャンスだと思います。実際にその人に会 うとCDや雑誌で想像していたものとは違う一面を必ず見せて下さいます。私の想像などはるかに超えて深み、多様さを感じさせてくださるのです。(こわもて のアーノンクールがあんなに優しく、謙虚な方だとは!)自分自身「人間」を磨くことも非常にに大切だと痛感しています。

さて、今日はベルリンフィルのコンサートだ!

2006年10月のご挨拶

ウィーンに来て早速、更新が滞ってしまいました。申し訳ありません。
10月2日から ウィーン国立音大の授業と通っているドイツ語学校の授業が始まり、午前中は大学(平日月~木)、午後は語学学校(月~金)の毎日が始まりました。ウィーン 国立音大は、指揮講習会で教えてくださったピロンコフ助教授の特別のご好意により聴講生としてライオビッツ教授の授業を見学しています。世界各地から集 まった(といってもアジア人が多いのですが)指揮者を志す学生と共に勉強できる環境は、音大を卒業していない私にとって、とても刺激的です。ただ、当然の ことながら講義は終始ドイツ語。大学で1年以上勉強していたにもかかわらず、10年前のことですっかり忘れてしまった私にとって、曲目解説の講義は必死に 耳を傾けてもチンプンカンプン。笑いが起こってもなんのことやら。ドイツ語の勉強と予習は必要不可欠です。

ドイツ語の勉強はIKIという学 校に通っています。オペラ座の斜め前にあり、大学とアパートのちょうど中間に位置するので通うにも便利です。これまた世界中から集まった学生たちとドイツ 語の勉強する環境も実に新鮮です。それぞれに持つ文化、感覚の違いも明らかで、どこの国とは申しませんが、授業の流れも気にせず質問に明け暮れたり、人の ものは自分のもの感覚の人がいたり、なかなかに大変です。若い人が多いせいか(下は16歳!)集中力が異様に持続しない人が多い気がします。それでも、根 気よく、丁寧に何度も反復し、宿題もたくさん出るので、着実にドイツ語は身についている感覚があります。

もう一つの大きな目的は、「ウィー ンの音楽を聴くこと」です。和声感、音楽の緊張と弛緩の関係。湯浅さんや下野さんがおっしゃる最も重要な要素を、できる限り自分の身体に覚えさせたいと考 えています。多くの方のご厚意により、私の強引なお願いを聞いてくださり、ウィーンでウィーンフィルのリハーサルを聞く機会を得ることができました。アー ノンクール氏指揮のウィーンフィルのリハーサルを!です。しかも1stヴァイオリンの一番後ろのプルトノすぐ後ろで聞いてしまいました。ウィーンフィルは 思いのほか和気藹々としたリハーサルですが、実に細やかに音楽を作るアーノンクール氏、繊細な音で答えるウィーンフィル。とてつもない音とアンサンブルを 間近で聴く体験は、筆舌に尽くしがたいものがあります。ムジークフェラインの大ホールの響きもいまさらながら驚かされます。まさにホールそのものが楽器と も言える感覚で、ウィーンフィルはこのホールの響かせ方を熟知しているように感じました。ブルックナーの5番は本当に素晴らしかった。(ただ響きは聴く場 所によって幾分違うように私は感じました。)

ただ、最大の難点は車椅子席が少ないこと。舞台が見える車椅子席は1階にたった一つ。あとの車 椅子席は舞台がほとんど見えないバルコンの2列目。立てる人ならバルコン2列目でも舞台は見えますが、なぜわざわざ立てない人を見えない席に?最も安い立 見席のチケットは車椅子は「安全上の問題」により売ってもらえない。(正確に言うと売ってはもらえるが入れてもらえないので要注意)音楽を愛する人が世界 中から集まるこのホールで、たった1席とはあまりに少ない。ウィーン市民も自分が車椅子になったら、1席しかなくなってしまうことに早く気づいて欲しい。 ちなみにウィーン国立歌劇場も4席と非常に少ない。コンツェルトハウスも4席。日本でもそうだが、高齢化社会を向かえた今、車椅子席はまさに争奪戦。車椅 子席の増設を是非検討して欲しいです。